こんにちは。
 労災保険について、今回は事業者が労災保険の加入手続きを怠った場合について、お話したいと思います。

 労災保険法は、国家公務員、地方公務員などの例外を除いて、労働者を雇用するすべての事業に適用され、1人でも労働者を雇っている事業主は、労災保険の加入を行わなければなりません。しかし、実際には労働者であるにもかかわらず、業務委託契約を締結して仕事に従事させるなどして、労災保険法の適用を免れている例は珍しくないといわれます。

 そして、上記のように、労災保険法の適用があるにもかかわらず、労災保険の加入手続きを行わない事業者が相当数に上ることが、労災保険制度の運営上問題となり、平成17年に労災保険の費用徴収制度が強化されました。

 事業主が労災保険の加入手続きを怠っていても、事故が発生した場合、労働者やその遺族には労災保険が給付されます。その一方で、事業主からは給付された労災保険の金額の全部又は一部が費用徴収されます。この事業者から労災保険の給付金を徴収する制度を、費用徴収制度といいます。
 (なお、別途遡って2年分の保険料も徴収されることになります。)

 平成17年の制度強化のポイントは、以下のとおりです。

1.労災保険の加入手続きについて行政機関から指導等を受けたにもかかわらず、手続きを行わない期間中に業務災害や通勤災害が発生した場合
→事業主が「故意」に手続きを行わないものと認定し、当該災害に関して支給された保険給付額の100%を徴収

2.労災保険の加入手続きについて行政機関から指導等を受けてはいないものの、労災保険の適用事業となったときから1年を経過して、なお手続きを行わない期間中に業務災害や通勤災害が発生した場合
→事業主が「重大な過失」により手続きを行わないものと認定し、当該災害に関して支給された保険給付額の40%を徴収

 以上のような厳しい費用徴収がありますので、予防法務の観点からは、実態が労働者であるならば、きちんと労災保険に加入しておいてほうがよいと思われます。