平成23年5月31日に不正競争防止法の一部を改正する法律が成立しました。もう半年以上経ってしまったのですが、この改正部分の施行日は今年の12月1日です(と、いうふうに閣議できまったのは9月13日なのです)ので、割とホットな話題なんじゃないかなあと思います。改正の骨子は、①刑事訴訟手続における営業秘密の秘匿と、②アクセスコントロール等の回避装置に対する規制強化です。順に見ていきましょう。

1.刑事訴訟手続における営業秘密の秘匿

 営業秘密侵害罪(21条1項)を被告事件とする刑事手続において、公開の法廷で明らかにされることにより事業活動に著しい支障を生ずる営業秘密については、申出により裁判所が秘匿決定をすることができることになりました(23条1項、3項)。一体どうやって秘匿するんだろうという話ですが、これは経産省のサイトに解説してありまして・・・(http://www.meti.go.jp/press/2011/09/20110913002/20110913002-3.pdf

 数値なんかはエックスで言い替えたらいいじゃない、というお話のようです。

 その部分の条文が23条4項ですね。裁判所が呼称等を定めることができ、公開の法廷で営業秘密が明らかにならないような措置をとることができるようになったそうです。裁判所が決めるんですねえ。ABC・・・XYZになるんでしょうね、きっと。被害者に自由に決めさせると、例えば私のような人物はピ~とかバキュンバキュンにしかねないので、そのほうが安全ですよね(少なくとも仕事ではしません、ご安心を)。

 さらに、裁判所が上記秘匿決定をした場合には一定の要件の下で、公判期日外で証人の尋問や被告人質問をすることができることになりました(26条1項)。

 ちなみに、裁判所がこの秘匿決定をするには、被害者らからの申出が要件となっています(23条1項)。

2.アクセスコントロール等の回避装置に対する規制強化

 ある装置について、アクセスコントロール等を回避する機能以外の機能を有していたとしても、実質的にそれを回避するために用いられている場合、従来は、アクセスコントロール機能以外の機能を有することを理由に規制を免れてきたのです(現行法2条1項11号)。しかし、今回の改正でそのような装置も新たに規制対象に追加されました。改正といっても、当該部分は「機能のみ」という文言から「のみ」を削っただけですけどね。

 この「のみ」を削ったおかげで、当該装置の提供行為にも刑事罰(5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金これらの併科)を科すことができるようになったのです。

 経産省がいうには、この「のみ」のせいで違法な海賊版ゲーム等がつかえるような装置等がバンバン販売されて、年間約1600億円の被害が出ているという試算があるとのことです。

 じゃあ、企業としてはどうしたら良いのかというお話なのですが、「自社製品がアクセスコントロール等の技術的制限手段を回避する目的で製造されたものではない場合であっても、そのような機能があれば不正競争防止法違反であるとの指摘を受けかねないので気をつけましょう!」ということですね。当たり前の話で申し訳ありません。もっとも、こういう場合に限らず、自社製品の色々な角度からのチェックは必要なことであると思います。いや、過去にも企業からの相談で複数ありまして、ここには書けませんが「何でそれに気がつかなかったんだよ!」というのがございます。で、大体は消費者から指摘されて気が付くんですな・・・消費者の目になって自社製品を見つめ直すのがよいかもしれません。

 アクセスコントロール等については、実は著作権法でも・・・いろいろあるのですが、話が長くなるので次の機会に。

弁護士 太田香清