こんにちは。今回からブログを書かせていただくことになりました、弁護士の長田弘樹と申します。よろしくお願いいたします。

1 請負契約と労働契約

 昨今、業種のニーズの多様化に伴い、多様な雇用形態がなされるようになってきています。その中でも、時期によって労働者が多く必要な時期とそうでない時期がある製造業などでは、請負契約というかたちがとられることがあります。これは、労働者が、請負人にあたるA会社との間で労働契約を締結し、A会社が注文者にあたるB会社に、当該労働者を労働力として供給し、B会社で仕事を行わせるという形態です。

 このような請負契約が使われていた理由は、労働契約ではないため、時間外労働手当や有給休暇を与えなくてよいなど、注文者にとってのメリットが大きいところにあるのですが、その最たるものが、いつでも契約を解除できるところにあります。労働契約では、解雇は厳格に制限されているのですが(労働契約法第16条)、請負契約ではこれが適用されないため、繁閑に合わせて比較的自由に調整することができるのです。

2 偽装請負

 しかし、契約上は請負契約としてB会社で働いているにもかかわらず、実質的にはB会社で雇用されている労働者とほとんど同じ条件で働かされている場合があります。具体的には、B会社の従業員から指揮命令がなされたり、配置転換や懲戒など、使用者にしか決定権がないことが行われているといった場合です。

 このように、形式的にはA会社の従業員であるにもかかわらず、実質的にはB会社の従業員として労働している形態を、偽装請負といいます。これは、労働契約の場合に受ける労働基準法等の様々な制約を潜脱するものとして、労働局の取り締まりの対象とされています。

3 偽装請負か否かの判断基準

 偽装請負か否かの判断基準としては、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(労働省告示第37号)があります。これによると、①労働者の直接利用、②業務の独立性の要件を満たした場合に、偽装請負ではないと判断されることになります。

⑴ 労働者の直接利用

 請負人にあたる事業主が、労働者に対して以下の点によって、労働者を直接利用する関係でなければいけません。

ア 次にいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること

(ア)労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと
(イ)労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと

イ 次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること

(ア)労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと
(イ)労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと

ウ 次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること

(ア)労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと
(イ)労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと

⑵ 業務の独立性

 さらに、労働者の業務を自己の業務として、注文者にあたる事業主から独立して処理しなければなりません。

ア 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること

イ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと

ウ 次にいずれかに該当するものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと

(ア)自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること
(イ)自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること