こんにちは。
 労災事件における労災保険金の請求ついて、もう少しお話したいと思います。

 労災保険法に基づく補償、すなわち労災保険金の支払いは、「業務上の災害」に対して行われるものです。業務上の災害と認められるためには、業務と災害の間に条件関係(その行為がなければその結果がなかったという関係)があるだけでは不十分で、相当因果関係(通常その行為からその結果が生じることが相当だといえる関係)が必要とされます。

 以下、具体的なケースを見て行きたいと思います。

1 事業主の支配・管理下で業務に従事している場合

 この場合の災害は、労働者の業務としての行為や事業上の施設・設備の管理状況等が原因となって発生するものと考えられるので、特段の事情がない限り、業務災害と認められると考えられます。
 所定労働時間内や残業時間内に事業施設内において業務を行っているような、通常のケースです。
 但し、以下の場合には、業務上の災害とは認められません。

① 労働者の恣意的な行為や私的な目的によって作業を中断していた場合
② 労働者が故意に災害を発生させた場合
③ 業務とは関係ない理由で第三者から暴行を受けたような場合
④ 天災地変による災害(但し、仕事の性質、内容、作業条件などに天災地変による危険を内在している場合には、業務起因性が認められることもあり得ます。)

 ところで、社内の懇親会等の行事に参加している場合はどうでしょうか。
 懇親会・社内旅行等は、就業時間外または事業場外で行われることが多いでしょうが、これが業務上と認められるためには、その行事に参加することが労働者にとって業務と認められることが必要になります。そのため、当然に業務起因性が認められることはないでしょうが、行事を行うことが事業運営上必要と認められ、労働者が行事への参加を強制されているような特別の事情がある場合には業務性が認められるかもしれません。

 では、社外の懇親会等の場合はどうでしょうか。
 取引先や業界団体等とのゴルフコンペに参加するよう会社から指示され、その中で負傷したりすることもあるかと思います。このような場合も、親睦会等への参加が業務といえるかどうかが問題となります。
 災害発生の原因となる業務は、通常の担当業務に加え、事業主の特別の命令で従事する業務も含まれますが、単に事業主の指示があったというだけでなく、事業運営上緊密な関係があることが必要と考えられますので、通常は否定されるのではないでしょうか。