前回は、多数持分権者及び多数持分権者から共有物を賃借した賃借人が、少数持分権者に目的の共有物の明渡しを請求することは困難であることを説明しました。
 (前回の記事はこちら:共有物と賃貸借2

 今回取り上げるテーマは、前回のテーマのように共有者の一人が共有物を単独で占有する場合、他の共有者は損害賠償等の請求ができないかです。

 民法249条は、各共有者は、共有物の全部について、その持ち分に応じた使用をすることができる旨定めています。とすれば、共有者の一人が共有物を単独で占有しても、適法となるのでしょうか。前回説明したように、明渡請求は、権利濫用あるいは信義則違反と言えない限りは認められないとなりそうです。

 しかし、他の共有者も、民法249条に基づいて、共有物をその持分に応じて使用する権利が認められています。共有者の一人が共有物を単独占有している状態では、他の共有者が共有物を使用することはできません。共有者の一人による単独占有は、他の共有者の持分に応じた使用に対する制限となります。

 最高裁は、平成12年4月7日の判決において、不動産の共有者は、当該不動産を単独で占有することのできる権原を有しないのにこれを単独で占有する他の共有者に対し、自己の持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することはできる旨を判示しました(判タ1034号98頁)。
 「当該不動産を単独で占有することのできる権原」の例として最高裁は、平成10年2月26日の判決において、共有者間の合意で共有者の一人が共有物を単独で使用する旨を定めた場合を挙げています(民集52-1-255)。

 共有物を賃貸借等で使用したいが、現に当該共有物を単独占有している他の共有者が単独占有を解消しないときなどは、明渡しを求めることは困難でも、単独占有する共有者が当該不動産を単独で占有することのできる権原を有しない限り、自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当損害金の不当利得の返還又は損害賠償の支払いを請求することができると考えられます。