弁護士 堀 真知子

皆さんは、「著作物」というと何を思い浮かべるでしょうか。おそらく、小説、映画、絵画、演劇等、何か人間の芸術的な創作活動の結果生まれたものを思い浮かべる方が多いのではないかと思います。

著作権法上の保護を受ける著作物に、上記のようなものが含まれることは当然ですが(著作権法2条1項1号は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています)、そのほかにも、人間の創作活動の結果生まれたものではあるが、芸術的な活動とは無関係に実用目的で創作されたコンピュータプログラムも、著作権法上の保護を受ける著作物に含まれるとされています。

コンピュータプログラムを著作権法上の「著作物」に加える法律改正が行われたのは昭和60年、今から20年以上前のことであるため、コンピュータプログラムが著作物として保護を受けることは当然であるという印象をお持ちの方もいるかもしれません。

しかし、コンピュータプログラムと著作権については、どの範囲のコンピュータプログラムが著作権法上の保護を受ける著作物といえるのか、著作権に含まれる「複製権」「翻案・翻訳権」という権利は、コンピュータプログラムにおいてはどのように理解すべきなのか等、興味深い問題が色々とあります。そこで、今回から、「コンピュータプログラムと著作権」というテーマで、何回かブログを書かせていただこうと思います。

さて、コンピュータプログラムの著作物と、従来の著作物との根本的な違いの一つは、コンピュータプログラムは、究極的には「コンピュータ」という機械を目的達成のためにいかに効率よく機能させるか、という極めて実用的な目的で作成された創作物であって、従来の著作物のように、創作活動の動機や効果に情緒的な要素が入り込む余地が全くないものであるという点があげられるのではないでしょうか。

しかし、設計図のように技術的な思想が表現されたものでも著作物にあたり得ることから、コンピュータプログラムも、創作の動機や効果に関係なく、技術的な思想が表現されたものであれば、著作物にあたると考えてよいでしょう。

この点、著作権法では、プログラムを「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」と定義しており(法2条1項10号の2)、この「指令を組み合わせた」という部分に人間の思想活動が読み取れるのではないかと思います。なぜなら、コンピュータに与える個々の命令自体はありふれたものであっても、その組み合わせ方によって様々な機能を実現することができるため、ある機能を実現するために、どのような指令をどのように組み合わせるかという方法(これをアルゴリズムといいます。)は、まさに技術者の思想活動と言える部分と考えられるからです。

とはいえ、コンピュータプログラムが思想活動の「表現」といえるかどうかについては、また別の問題があります。これについては、次回説明することにします。