こんにちは。
 我々の事務所では、賃貸借契約を結んで建物を貸したけれども、賃料を払ってもらえないので、契約を解除して建物明渡しを求めたいというご依頼をたくさん頂いています。
 ご依頼を受けたとき、契約を解除するためには、まず通知を送って催告をしなくてはなりません、というご説明をします。

 催告というのは、一般的には、債務者に対して債務の履行を請求する意思の通知のことです。賃料不払いを理由とする賃貸借契約解除の場合には、●日以内に不払賃料を支払ってくれないと契約を解除しますよ、という内容の通知を送ることになります。
 ところで、不動産の賃貸借契約の場合には、賃料不払いがあれば、今述べた催告をしなくても解除ができるという特約がされることが多いといえます。そのため、このような特約が結ばれていても、催告をしなければならないのか、とご質問を受けたことがあります。

 判例によれば、いわゆる無催告解除特約が結ばれた場合、契約を解除するにあたり催告をしなくても不合理とは認められない事情(賃借人の背信性)があれば、催告をしなくとも解除が認められるとされています(最判昭43.11.21民集22.12.27)。
 この賃借人の背信性として、例えば、賃借人が相当の回数にわたって賃料を支払っていなかったことなどが挙げられます。
 たとえば、賃借人が約9年10か月の長期間賃料を支払わず、その間、不動産を自己の所有物であると主張して、賃貸借契約の存在を否定し続けたという事案では、催告をせずにした解除が有効であると認められています(最判昭49.4.26民集28.3.467)。
 しかし、借家人が11か月分の賃料を支払わず、それ以前においてもしばしば賃料の支払いを遅滞したことがあったという事案について、催告が必要であると判断した判例もあります(最判昭35.6.28民集14.8.1547)。

 判例の見解からすると、賃料の支払いは催告があれば比較的容易になされ得るものなので、債務の履行という観点からは、催告なしに解除が認められる場合はかなり限られてくるようです。
 催告は、相当な期間を定めてする必要がありますが、この期間は1か月とか長期間が求められているわけではありません。
 あとで催告がないことを理由に争われるより、催告をきちんとした方が、結果的には素早い解決につながるといえます。
 「急がば回れ」ですね。