更新料に対する対応策について、弁護士の間でも様々な角度から議論がなされ、ほぼ出尽くしたかなという感じがしますので、その対応策を整理して紹介したいと思います。
1.更新料の徴収をやめる。
2.更新料を月額賃料に按分する方法で転嫁する(したがって、月額賃料の値上げとなります)。
3.中途解約の際に精算して更新料の一部を返還する(中途解約精算型一時金と呼ばれてます)。
4.月額賃料転嫁型と現状の更新料との借り主に選択させる。
5.定期借家契約に切り替えて、更新料の代わりに再契約料として徴収する。
1について
この対応策については、多くの家主さんや賃貸管理業者さんたちが反対しています。「これができないから困っているんじゃないか」という声が聞こえてきそうです。最も人気がない対応策ですが、これをご主張されている弁護士さんはすくなくありません。
2について
これは単なる賃料の値上げです。したがって、価格競争力という点で不利になると同時に、近隣相場と比較して著しく高い賃料になってしまうと、賃料減額訴訟を起こされるかもしれないというリスクが高まります。
3について
これは、更新料に賃料を補充する役割を持たせ、その趣旨を貫こうとするものです。従来、更新料の裁判で、家主さん側が、更新料の有効性の根拠のひとつとして「更新料は賃料を補充する機能を有している」と主張することがよくあります。
その主張に対する裁判所の見解は、「中途解約した際に精算していないのだから、賃料の補充というのは不合理」とするものです。この裁判所の見解に応えるためには、中途解約の際に精算して更新料の一部を返還することです。しかし、当然ですが、その限度で家主さん側の収益は減少します。
4について
この対応策は、発想を変えて、借り主に選択権を与えようとするものです。現状の通り更新料を支払うか、更新料がない代わりに高い賃料を支払うかの選択をさせるわけです。
選択肢のひとつに、現状の更新料が残っていますが、自分で選択しているわけですから、「消費者に一方的に不利な契約」を結ばせたことにならず、消費者契約法10条に反しないはずだ、という考え方が背景にあります。
5について
これは、私も以前のブログで書きましたが、定期借家契約に切り替えて、更新料をとらずに再契約料を徴収しようという考え方です。
まず、1については、裁判所の見解に素直に従いましょうということですから、当然リスクはありません。しかし、これだと更新料収入を放棄するということを意味しますので、最も人気がないのは当然でしょう。
これに対して、2から5には、一定のリスクがあります。2は家賃の値上げになるので近隣との競争力が低下するというリスクがあります。3については、更新料の一部返還を余儀なくされるというリスクが、4については、結局現在の更新料に誘導しているだけではないかということで無効とされるリスクがあります。5については、実質更新料を取っているのと同じで脱法行為と評価されるというリスクがあります。
どれも一定のリスクがあり、どのリスクが一番低いのかは一概に言えませんので、それぞれ試してみるしかないと思います。
私は、長い目で見たら定期借家契約の導入で対策を立てることを薦めています。
なぜなら、この機会に定期借家契約を普及させることができ、更新料以外のメリットも家主側にもたらすからです。単に更新料だけの対策であるならば、ほかの案でもよいかもしれませんが、例えば、定期借家契約であれば滞納家賃の発生を最小限度にとどめるという制度設計も可能です。
是非、この機会にクライアントとこの問題を一緒に考えていきたいと思います。