1 支払われなくなったときに備えて
不良債権を発生させないための典型的なアドバイスは、事前に債務者の信用調査をすべき、担保・保証人をつけるべきといったものです。
たしかに、債務者が優良な不動産を所有しており、1番に抵当権をつけられるような場合には効果的なアドバイスでありますし、保証人をつけておくことも、債権回収の可能性をあげるためには重要なことです。
しかし、実際には信用調査をすると取引自体が成立しなくなってしまう可能性があったり、担保となるような財産がない場合も多く、事前に対策しておくことは困難な場合もあると思います。
2 最低限入手しておくべき情報
債権回収する際に最も基本的な情報は、相手方の住所及び連絡先です。この2点すら分からない状態では、債権回収に着手するだけでも時間と費用を要することになります。
したがって、この2点については、契約の際にできるだけ多くの情報を取得しておく必要があると思います。
3 債務者が個人の場合
債務者が個人の場合、債務者本人の住所及び連絡先に限らず、債務者の実家の住所及び連絡先なども把握しておけば、後日行方をくらませた債務者本人と連絡がつくこともあります。
また、勤務先の住所及び連絡先を把握しておくことも重要です。勤務先が分かっていれば、判決等の債務名義をもとに給与を差し押さえて債権を回収できることもあります。
但し、原則として、差し押さえられる額は給与の4分の1ですので、回収期間が長期になる可能性があること、差押命令に応じない会社も存在するなどの点には注意が必要です。
4 債務者が会社の場合
債務者が会社の場合で面と向かって信用調査ができない場合は、契約後の経営状況を知るために、定期的に法務局で商業登記簿謄本を入手しておくことが考えられます。
本店所在地を転々としていたり、役員の構成が頻繁に変わっている場合には信用不安ではないか検討する必要があると思われます。
5 連帯保証人について
連帯保証人等をつけられた場合でも、保証人は債務者本人とは異なり、当事者意識が希薄な場合も多いうえ、保証契約の成立を争われる場合もあります。
契約の成立が争われるリスクを低くするためには、連帯保証人の印鑑証明書を取得しておくことが一般的です。
さらに、債務者との契約が更新や再契約が行われる場合、連帯保証契約も継続するとは必ずしも言えませんので、更新や再契約の際には、再度、連帯保証契約も締結しておく方が良いと思います。