皆様、こんにちは。

1 イントロ

 今回は、会社の業務の中で著作権法に関わりがありそうな著作物のコピーについて説明させていただきたいと思います。

2 社内における著作物のコピー

 以前にもご紹介いたしましたが、他人の著作物を使用するには、著作権者の許諾(許可)が必要となるのが原則です(著作権法63条2項、同条1項)。
 ただし、個人的に利用する場合(著作権法30条)など、著作権者からいちいち許可を得なくても使用が許される場合が法律上定められております。

 それでは、会社内で書籍、雑誌、新聞等の著作物をコピー使用とする場合は許可が要るのでしょうか。
 社員が個人的に著作物を購入して、あくまでも個人的にコピーを撮ったと説明すれば、前記のように許諾を必要としない場合にあたるといえるのでしょうか。

 このような説明はまずもって苦しいと思います。実際には個人的にコピーした箇所を読んで楽しむというわけではなく、社内資料等に用いるわけですから、複製権の侵害に該当することになるでしょう。
 それでは、どうしてもコピーしたい資料などがある場合、著作権者本人に許可をもらいに行かないと、全く手の出しようがないのでしょうか。

 実はそのようなことはなく、「社団法人 日本複写権センター」に複写を依頼することが可能です。当該センターは、登録されている著作物について、複写に関する権利行使の委託を受けており、利用者が使用料(1頁2円、税別)を支払うことで依頼に対して委託を受けている範囲内で複写をしてもらうことができます。
 たかがコピーですが、違法でもバレなければ大丈夫、と安易に考えずに適法な手続を選択されることをお勧めいたします。

3 図書館でコピーさせてもらえるのか

 最近は図書館も著作権に敏感になってきました。
 コピーの分量についても注意書き張り出されている所が散見されます。
 図書館は研究施設との関わりもあるため、基本的には学術研究等の利用や前記の個人的な利用の場合に、図書館で管理されている文献等の著作物をコピーさせてもらえることになります(著作権法30条、31条参照)。
 このため、会社の仕事に使うためにコピーをすることは上記の目的に該当しないため、違法と評価される可能性が高いです。

4 近時の問題

 最近は書面をスキャンしてPDFファイル化するなど、データとして管理することが増えています。
 しかしながら、著作物をスキャンしてデータ化すること自体も形式的には複製権の侵害に該当すると考えられます。
 しかも、スキャン等の処理は前記の日本複写権センターでも取り扱っておらず、今のところ、原則的には著作権者本人から個別に承諾を得なければならない状況にあるのです。
 既に低価格による書籍等のスキャンサービスを開始した会社があるようですが、法的にどのように評価されるのか、今後の動向が気になるところです。

5 最後に

 今回はそこまで目くじらを立てなくても良いのではないかと思える部分もありました。社内での打ち合わせのためだけにコピーすることさえも一律違法と評価されうるところに違和感を覚えます。このままでいいのか、条文の整備し直すのか、それとも今の条文の解釈を柔軟に捉えていくのか、解決方法について統一的な見解は定まっていないように思えます。
 実際に、社内だけの使用に対して損害賠償請求や差止め請求がなされることはあまり想定できませんが、社外で見られる可能性のあるものについては、適法に取得したコピーであるか否か、注意を払っておくべきかと思います。

今回もお付き合いいただきありがとうございました。