今回は、借地借家法の定める、法定更新と更新料の関係について説明したいと思います。賃貸借契約には更新料が定められていることが多いですが、法定更新の場合に更新料を請求することができるのでしょうか。

 借地借家法では、建物所有を目的とする借地契約及び建物の賃貸借について法定更新を定めています(借地借家法第5条及び第26条)。
 建物賃貸借では、賃貸期間どおりに解約しようと考えた場合には、遅くとも6ヶ月前には更新拒絶の通知を送っておく必要がありますし、賃貸期間終了後も継続して使用している賃借人には改めて異議も出す必要があります。
 したがって、更新契約をしなくとも、多くの場合は法定更新により、賃貸借契約が更新されることが多いと思われます。

 法定更新の場合の更新料の支払義務について、下級審の裁判例の結論は分かれており、更新料の定めは合意更新の場合を想定したものとして、法定更新の場合には更新料の請求を認めない事例もあれば、法定更新の場合を除外すべき理由はないとして、更新料の請求を認めている事例もあります。

 但し、法定更新の場合に更新料の請求を認めている判決の理由は、更新料を賃料の補充ないし異議権の放棄の対価などと説明しているところ、これらの理由付けは、消費者契約法10条の適用により更新料の支払義務を否定した大阪高裁の判決(平成21年8月27日)が採用しなかった理由付けです。

 したがって、法定更新した場合の更新料の支払義務についても、大阪高裁の判決の影響を無視できません。つまり、消費者にとって、更新料の支払義務が一方的に不利益なものではないということを合理的に説明できなければなりません。
 法定更新であれば、契約締結時以外には賃借人に合理的な説明をすることができませんし、更新時に改めて更新料の趣旨などを説明した書面を交わしたりすることが難しくなります。したがって、更新時に更新料を有効とするための対策には限界があるため、法定更新となる場合に備え、契約締結時の対策を重視する必要があると思います。