弁護士  金 崎 浩 之


1 はじめに
 今回は、定期借家契約のポイントについて取り上げたいと思います。

 実は、定期借家権というのは、平成11年(1999年)に制定された「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」によって導入されたもので10年以上前からあるんですが、あまり利用されていませんでした。
 それなのに、なぜ今頃、「定期借家権」なのかというと、リーマンショックの不況が長引き、この不景気を打破するための打ち手として見直されつつあるからです。不景気で家賃滞納も増加する一方で、保証会社も審査を厳しくし始めたため、賃貸住宅の市場が縮小均衡しつつある今日です。家主さんとしては、何とか滞納家賃に対するリスク管理をしたいはず…。
 そんな経営環境の中で、定期借家契約は、不景気を乗り切る呼び水になりそうです。

2 定期借家契約のポイント
 定期借家契約の最大のポイントは、その名称の通り、更新が予定されていない点にあります。注意しなければならないのは、正当理由がなくても更新を拒絶できるというのではなく、そもそも更新を予定していないという点です。
 もっとも、再契約は可能なので、再契約すれば事実上、更新したのと変わらないようにできますが、その場合であっても、法形式上は、再契約であって更新ではありません。

 このように、正当事由がない限り更新を拒絶することができない通常の借家契約と異なり、期間満了で退去してもらうことが可能となった定期借家権のパワーは強力です。

 では、家主さんがこのような強力なパワーを手に入れるための定期借家契約の要件は何でしょうか。

 そのポイントを整理すると、まず、定期借家契約は書面で交わさないとダメだということです。一般の方たちは意外とご存じないのですが、賃貸借契約というのはいわゆる諾成契約なので”口頭”でも成立します。この点、定期借家契約では、厳格に書面の作成が義務づけられています。
 もっとも、今日の契約社会において、通常の賃貸借契約においても契約書を作成するのが普通で、口頭なんかで契約しませんから、実務に大きな影響があるとは思えませんけど。

 次に、賃貸借契約を書面で行ったとしてもそれだけでは不十分で、それとは別に「更新がなく、契約の期間満了により終了する」旨を記載した書面を予め借家人に交付し、説明しなければなりません。要するに、契約書のどこかに定期借家契約であることを記載した条項が入っているだけでは借家人が誤解する可能性があります。そこで、別途その旨を明記した書面を交付して説明することによって、この契約が「定期借家契約」であることを借家人に印象づけ、借家人が誤解することがないようにする趣旨だと思われます。

 ところで、定期借家契約では1年未満の契約も有効ですので、例えば、賃貸期間3ヶ月という「お試し」的なものにも活用できます。

 さて、このようにして定期借家契約が有効に成立したとして、どのような法的効力が付与されるのでしょうか。
 まず、定期借家と言えども、期間満了によって当然に退去を求めることができるということではなく、借家人に対して6ヶ月前の解約通知を行わなければならないとされています。
 先ほども触れましたが、定期借家契約が更新を予定していないとしても、再契約は可能なわけですから、借家人に無用な期待を持たせないように、予め解約通知を発することを家主側に義務づけたわけです。そして、借家契約では、正当事由なく退去を求めることができてしまうので、借家人保護のため、解約通知をする時期も長めにとり、6ヶ月前としました。
 実は、定期借家契約が思った以上に普及していないことの大きな原因の一つとして、この6ヶ月前解約通知があると指摘されています。家主さんからすると、これがけっこう煩わしいようです。
 もっとも、契約期間が1年未満の場合には、この義務は課されていないことに注意が必要です。

 ということで、定期借家契約のポイントをざっと見てみましたが、実際にどのように利用されているのか、いくつか参考になる事例をこのブログで紹介していきたいと思います。
 お楽しみに!