今回も、前回に引き続き、建物賃貸借の解約申し入れについての正当事由が認められなかった(明渡請求が認められなかった)事例についてご紹介・分析します。

 

【東京地裁平成15年11月18日】

 

 本件は、概要以下のようです。

 本件では、東京都世田谷区所在の建物(以下「本件建物」)の賃貸人である原告が、賃借人である被告らに対して、家賃不払い、無断増改築等を理由に賃貸借契約を解除したこと、賃貸借契約の賃貸借契約の解約申し入れをしたことを理由に、無条件ないし立退料の提供を条件に、建物の明け渡しを求めました。

 原告が正当事由を主張する根拠となったのは、おおむね以下のような事情です。

    本件建物は、すでに朽廃しており、建て替えのために賃貸借契約を終了させる必要がある。

    被告らは、原告の承諾を得ないまま、本件建物を増改築している。

    上記の無断増改築により、原告と被告の間の信頼関係は破壊された。

    原告らは、被告らの立ち退きと引き替えに、600万円を支払う意思がある。

 

 被告らは、これに対して、大要以下のとおり主張しました。

    本件建物は、被告らが修繕等しているため、朽廃しておらず、建て替えの必要性はない。

    本件において立退料の提供により正当事由を補完するのは不適当である。

 

 この事例において、裁判所は以下のとおり判断して、明渡請求には正当事由がないものとしました。

 

    本件の具体的事実関係に照らせば、本件建物を被告側(賃借人側)が修繕するについて賃貸人の承諾がなかったことは考えられない。したがって、「無断で」修繕がなされたという原告の主張は採用できない。

    本件で被告が原告に対して建物使用料として支払っている賃料は、相場よりも低廉であるが、現実に賃借人側において本件建物に多額の費用を掛けて改造、修繕等がされていることに鑑みれば、家賃の額が一般の賃貸借に比して低廉であることに相応の理由があると言うべきである。

    被告提出にかかる本件建物内部の写真をみても、被告らの修繕などの結果、本件建物の内部の状況は良好に保たれており、居住するに不便なほど老朽化しているとは認められない。

    仮に家賃などが不相当に低廉であるとしても、その増額については、調停等をもって解決を図るべきものである。

 

 本判決に至った理由としては、「修繕の必要性」について、原告側が十分立証できなかったことが挙げられるかと思います。「修繕の必要性」について、原告側からは特段の立証がなかった反面、被告側からは、本件建物の内部の写真が提出され