1 企業経営者が学ぶべきこと
多くの企業経営者にとっての最大関心事は、どうやって自分の会社を成功に導けるかだと思います。言いかえると、如何にして儲け続け会社として成長し続けるかです。
だからこそ、書店に行くと、成功した会社の経営者が書いた本をたくさん見つけることができます。
ちょっと前だと、ホリエモンの本が書店で平積みされていましたよね。最近だと、ユニクロの柳井さんの本をよく見かけます。
私は弁護士ですが、法律事務所の経営をあずかる経営者です。その意味では、会社経営者と全く変わりません。
したがって、私が経営している法律事務所を如何に成長させ成功に導くかが私の関心事であることは間違いないのですが、私が成功よりもはるかに関心があるのは、失敗についてです。
企業経営者として、本当に学ばなければならないことは、どうすれば成功できるかではなく、どうなると失敗するのかだと思います。
なぜならば、私たちはかつて輝かしい成功を収めてきた企業があっという間に転落していくさまを何度も見てきているからです。成功は失敗しないことを保証しません。
しかしながら、どういうわけか失敗した企業についての研究が少ない。成功企業は魅力があるからどうしても目を奪われてしまいますが、失敗した企業、倒産した企業について本格的な研究がないのが残念です。
2 事業再生と企業経営
私が事業再生に関心が深いことの最大の理由は、私が弁護士だからではなく経営者だからです。
私としては、成功した会社よりも失敗した会社に関心がある。だから、事業再生に並々ならぬ関心があるんですね。
でも、私は昨今の事業再生の専門家の仕事振りには少々不満があります。
弁護士にせよ公認会計士にせよ、事業再生の専門家を自認している人たちは、医者に例えれば外科医です。
でも予防医学については何も知らない。実は、「どうすれば病気にならないか」を知らなくても、外科手術で患部を切除することは技術的にできるんです。
例えば、最近の事業再生の典型的スキームは、スポンサーを連れてきて資金を注入してもらう…。これって、手っとり早いですよね。
大規模なリストラも典型的な外科手術です。
でも、これらのスキームにたけているからといって、会社の倒産メカニズムが明確になるわけではありません。
むしろ私は、事業再生の専門家として、倒産法制に精通するだけではなく、会社の倒産メカニズムを熟知しておきいたいんですね。
そうすれば、多くのクライアント企業に対して、日ごろから有益なアドバイスができると思うし、自分が経営している法律事務所も傾けずにすみます(笑)。
3 地獄へ行く道を熟知する
したがって、私は、会社を成功させるための最大の方法は、倒産した企業から学ぶことであると確信しています。
最後に、私が敬愛する君主論の著者、マキャベリの有名な言葉を引用して終わりたいと思います。
「天国へ行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである」