こんにちは。長谷川です。
今日は前回に引き続き、下請法のお話をしようと思います。
前回は、下請法の4つの義務のうち、書面交付義務についてお話ししました。(それだけで終わってしまった・・・。)
他にも、親事業者に課せられている義務があります。
2つ目の義務は、書類作成/保存義務(下請法5条)です。
製造委託をはじめとする下請取引が完了した場合、親事業者は、給付内容、下請代金の金額など、取引に関する記録を書類として作成し、2年間保存しなければなりません。
記録/保存すべき事項としては、下記17項目です。
(1) 下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)
(2) 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(役務提供委託の場合は役務の提供の内容)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をする期日・期間)
(5) 下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者から役務が提供された日・期間)
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は,検査を完了した日、検査の結果及び検査に合格しなかった給付の取扱い
(7) 下請事業者の給付の内容について、変更又はやり直しをさせた場合は内容及び理由
(8) 下請代金の額(算定方法による記載も可)
(9) 下請代金の支払期日
(10) 下請代金の額に変更があった場合は、増減額及び理由
(11) 支払った下請代金の額、支払った日及び支払手段
(12) 下請代金の支払につき手形を交付した場合は、手形の金額、手形を交付した日及び手形の満期
(13) 一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
(14) 電子記録債権で支払うこととした場合は、電子記録債権の額,下請事業者が下請代金の支払を受けることができることとした期間の始期及び電子記録債権の満期日
(15) 原材料等を有償支給した場合は、品名、数量、対価、引渡しの日、決済をした日及び決済方法
(16) 下請代金の一部を支払い又は原材料等の対価を控除した場合は、その後の下請代金の残額
(17) 遅延利息を支払った場合は、遅延利息の額及び遅延利息を支払った日
これらを記録/保存させる目的としては、主として、公正取引委員会による調査に役立たせることです。
従って、記録/保存をしていなかったり、虚偽の内容の記録を作成していたりすると、親事業の代表者や使用人等は、50万円以下の罰金が課せられる恐れがあります。
個人的には、この罰金、ちょっと安い気がします。
いくら下請法違反の疑いがあっても、資料がなかったら十分な調査もできません。
従って、この記録/保存義務ってとても大切だと思うんですよね。特に、法で定められているのに敢えて記録しない又は虚偽の記録を作成するなんて、最初から、下請法に違反した取引を行う気満々だったと思います。
従って、罰金にしても、企業が容易に吸収できないような高額なものにして、経営上のリスクが大きいものにした方が良いのではないかと思います。
・・・少し外れてしまいましたが、4つの義務の内、3つ目は、下請代金の支払期日を定める義務(下請法2条の2)になります。具体的には、給付の内容について検査をするかどうかを問わず、給付を受領した日から起算して60日以内の日(しかもできるだけ短い日)に下請代金の支払期日を定める必要があります。
仮に当事者が支払期日を定めなければ、実際に給付を受領した日が支払期日になりますし、当事者が60日を超えた日を支払期日と定めても、下請法上、支払期日は、給付受領日から起算して60日を経過した日の前日=60日目となります。
この規定の趣旨は説明するまでもないと思いますが、親事業者がその優位性を利用して下請業者に対して不当に支払期日が遅くなるような取引を強要させない為です。
一概に言うことはできませんが、下請業者の中で規模が大きい会社と小さい会社のどちらが多いかと言えば、恐らく小さい会社の方が圧倒的に多いと思います。
そして小さい会社の方が、資金繰りも大変なことが多いと思います。
従って、納入日と支払期日の間が余り長いと、それだけで下請業者は逼迫してしまいかねず、それが原因で、目先の利を維持する為に、更に不利な取引を強いられるということにもなりかねません。
従って、当事者の合意に関わらず、最長60日という期日を決めて、下請け会社を守っているわけです。
今回もかなり長々と書いてしまいました。
次回は、4つ目の義務と禁止行為についてお話ししていきますね。
また再来週。