弁護士 金 崎 浩 之


 金融庁は、今月14日、借り主が過払返還請求した履歴を信用情報(いわゆるブラックリスト)から削除させる方針を発表しました(2010年1月15日付毎日新聞朝刊)。

 ところで、過払返還請求権って債権ですから、そもそも債務者の信用情報に掲載されるのはおかしいと思いませんか。実際、このたびの金融庁の方針も、過払返還請求の履歴が信用情報に載るのはおかしいので、削除させることにしたわけですけど。

 でも、金融機関、とりわけ消費者金融機関にとっては、かなり認識が違うんですよね。貸金業者にとっては、約定通りに返済されなかったものは、「不良債権」なんですよ。過払返還請求とはいうものの、それは法律の世界の話。貸したお金を約束した通りにちゃんと返してくれなければ、それは不良債権として理解されるんですね。だから、過払返還請求の履歴情報は、貸金業者にとって重要な情報なんです。

 そして、もうひとつ、信用情報に掲載したい理由があります。それは、過払返還請求の行使を萎縮させる目的です。貸金業者からすれば、過払返還請求権を行使するなんてもってのほか。ちゃんと、約定通り支払うべきだ、ということになります。信用情報に掲載されてしまった人は新たな融資を受けにくくなりますので、将来借入などを予定している人は、過払返還請求することを思いとどまるかもしれません。これは、貸金業者にとって、ある意味理想的解決です。

 しかし、まあ、これはあくまでも貸金業者側の都合。法律的には、過払い返還請求は負債ではないので、権利行使した履歴が信用情報に載せられ、将来の借入が受けにくくなるという社会生活上の不利益を被るいわれはありません。

 でも、今まで過払請求履歴が信用情報に記載されることを嫌って、過払請求を躊躇していた人たちは確実にいると思います。この削除が実施されれば、こうした人たちも安心して過払請求を行うと思いますので、貸金業界にとっては、経営を圧迫する要因がまたひとつ増えたということですね。