弁護士  金 崎  浩 之


1 過払金請求訴訟の推移
 東京地裁の調べによると、昨年度、すなわち、2009年1月から12月末までの間に東京地裁に係属した通常訴訟が、全体で約3万9000件あったそうです。そのうち、消費者金融に対するいわゆる過払金返還請求訴訟の件数が約2万2000件だったというではありませんか(2010年1月10日日経新聞朝刊)。
 そうすると、昨年度の東京地裁の通常訴訟のうち、実に約56.4%が過払訴訟だったということです。これって、すごくないですか?通常訴訟の過半数をゆうに超えてます!

 ちなみに、その1年前はどうだったのでしょうか?そこで、2008年1月から12月末までの数字を見てみると、東京地裁に係属した通常訴訟の全体数は、3万8716件だったそうです。ほぼ3万9000件ですから、2009年度とあまり変わりませんね。これに対し、同年の過払訴訟は、約1万2900件だったそうなので、過払訴訟の占める割合は、約33.3%になります。通常訴訟の約3分の1が過払訴訟ということになりますね(前掲同紙)。

 同紙の調べによると、2004年度は、東京地裁の過払訴訟は、約2100件だったそうです。それが、2008年度は約1万3000件に、2009年度は約2万2000件ですから、すごい勢いで増加していますよね。

2 消費者金融の資金繰り難
 近年、著しく過払訴訟が急増した背景には、消費者金融の過払金返還の資金繰りが困難となって、任意の支払いに応じられなくなったという事情があるようです。

 つまり、過払金の請求は、別に必ずしも訴訟に乗せる必要はなく、消費者金融機関との任意交渉でもできるわけです。そして、交渉が決裂した場合に訴訟になります。

 従前は、交渉による過払請求がむしろ原則だったようです。
 ところが、過払請求が増加し、消費者金融がこれを支払えなくなれば、当然交渉は決裂せざるを得ません。交渉が決裂してしまえば、紛争は裁判に持ち越されます。
 近時の過払訴訟の急激な増加は、消費者金融機関の支払能力不足にあるようです。

 そうすると、次のように言えるでしょう。消費者金融は、任意の過払請求に応じられるだけの十分な資金がない→したがって、返済できない状態にある、と言うことではないでしょうか…。これって、消費者金融が支払不能状態にあることが強く推認されます。

 これまでアエルや三和ファイナンスの経営破綻に続き、昨年、アイフルが事業再生ADRを申請しました。
 私は、消費者金融業界にさらに激震が走るのではないかと見ています。
 昨年度の過払訴訟の急増は、消費者金融機関の支払不能状態を示唆しています。現在のところ、アコム、プロミス、武富士が経営破綻したという報道はないようですが、これらの大手消費者金融機関にも波及するのではないかと懸念しています。
 支払不能な状態にある消費者金融を訴えて、仮に強制執行したところで、払えないことにかわりはありませんから。