弁護士 金 崎 浩 之


弁護士バー その1

1 飲んで気軽に法律相談
 いやいや…。弁護士業界もおもしろくなってきましたよ。
 2009年12月9日付毎日新聞朝刊に大変興味深い記事を見つけました。

 同紙によると、第二東京弁護士会所属の外岡潤弁護士(29歳)が、友人の元システム開発会社役員の提案で、弁護士バーを出店する計画だそうです。
 その基本的コンセプトは、気軽に弁護士に相談できる場を提供しようというもので、弁護士がバーテンダーを兼ね、お酒を提供しながら法律相談にも応じるということだそうです。

 ところが、同紙の報道によると、彼の所属弁護士会である第二東京弁護士会が、その出店計画に対して待ったをかけているとか。
 その理由は、大きく分けて2つあります。
 1つは、このバーは非弁提携の問題。もう1つは、弁護士の品位の問題です。

2 非弁提携と弁護士の品位
 まず、非弁提携について。
 この弁護士バーを直接運営するのは法律事務所ではなく、別途社団法人を設立するスキームのようです。そして、この社団法人に対しては、弁護士以外の人でも出資できる仕組みになっているそうです。しかも、このスキームでは社団法人と飲食事業者が共同で出店し、儲けは折半ということのようです。
 このスキームに対し、第二東京弁護士会は、弁護士ではない社団法人が収入を得て、弁護士と顧客の仲介をするのは、「報酬目的の斡旋」に該当するので弁護士法違反であると考えているようです。

 次に、弁護士の品位について
 同紙によると、第二東京弁護士会の副会長の味岡良行弁護士は、「客が酔った状態で法律相談を受けるのはトラブルのもとで、弁護士の品位も損なう」というコメントを出しているようです。

 先の外岡弁護士は、「法の規定は悪質なブローカーを想定しており、今回の計画は抵触しない。認められなければ実際に開店し、世間に是非を問う」と強気の姿勢のようです(前掲同紙)。
 第二東京弁護士会も「開店したら何らかの措置を検討する」と一歩も譲りません。

 私は傍観者ながら、どのような展開になるのか楽しみにしています。

3 今後の展開
 まず非弁提携問題について、外岡弁護士が主張している「悪質なブローカーを取り締まるのが立法趣旨だ」という点について。これは、ひとつの解釈論としてはともかく、現在の実務の運用では悪質なブローカーに限定されていません。例えば、税理士との業務提携でも、非弁提携で取り締まるのが弁護士会の実際の運用です。したがって、もし外岡弁護士の理屈がまかり通り、弁護士会が何らの処分も行わなかったりすると、いっきに非弁提携が広がる可能性があります。「悪質なブローカーでなければいいんだろ」となり、取り締まりの根拠がなくなるからです。したがって、弁護士会としては、外岡弁護士の論理に与するわけにはいかないでしょうね。

 次に、酒を飲みながら法律相談というビジネスモデルについて。
 これも弁護士会が指摘するように問題があるでしょうね。まず、お客が酔っているわけですから、弁護士のアドバイスを正確に理解できるかが問題。また、他の客もいるところで相談を受け、おろらくパーテーションも何もないと思いますので、顧客のプライバシーは守れません。「それでもいい」というお客でないと相手にできません。さらに、酒場で重要な契約書や書類を広げて法律相談を行うというのも非現実的です。隣の客に見られちゃいます。
 このような状況下で法律相談を行うことは確かに問題です。私個人としては、非弁提携よりもこっちのほうが弊害が発生する危険が大きいと感じています。
 この点を外岡弁護士がどのようにクリアしているのか、そこが問われますね。

 いずれにせよ、この問題は弁護士にとって興味深い問題を提起しているので、私も楽しみに傍観させていただきます。