会社の内部的・対外的な問題や新規事業の法的問題点を解決するにあたって、現行の法律に触れないように配慮することは、たいていの会社で、何らかの形で検討されていることがほとんどだろうと思います。ただ、現行の法律に照らすだけだと、どうしても法的な問題を完全にクリアできず、法的問題点については無視する形で決断を強行するか、あるいはしぶしぶあきらめてしまうか、のいずれかにならざるをえない、というジレンマを抱えていらっしゃる方もいるかと思います。
弁護士の中でも、現行の法律や裁判例に照らして比較的保守的なアドバイスはするが、その問題点をどのようにクリアするかについては必ずしも有益なアドバイスをしてくれない、という人もいるようですので、顧問弁護士はいるがいまひとつ有効に活用できていない、という会社・経営者様もいるかもしれません。
もちろん、現行の法律や裁判例がどうなっているかについての知識を有することは非常に重要ですし、これらをただ単に無視する内容の助言を簡単にすることはできないことは確かです。
ただし、相手方との交渉により、必ずしも法律や裁判例に縛られない柔軟な内容の交渉でまとめたり、個々の案件に応じて十分な吟味を行ったうえで、現行の法律や裁判例に触れることなく、問題を解決するような助言ができることもあります。そのためには、依頼者の方が十分に弁護士を信頼し、また、弁護士のほうも依頼者の方と一緒に悩む時間を与えていただくことが大切になってきます。
では、経営判断として、法律的に微妙な、あるいはグレーな問題点を含む決断をする際に、どのようにすれば法的な問題点をクリアすることができるのでしょうか。
具体的な案件を前提としない、あくまで一般論としてですが、以下のような注意点があげられます。
1 交渉・事実関係の経過については、なるべく具体的に文書化しておく。
法律的にグレーな点については、仮に裁判で争われた場合、実際はどのような事実経過をたどったかが、裁判の行方を左右する重大な要素となることが多いです。したがって、当該問題が発生する前後の事実関係については、なるべく具体的に文書にまとめておき、後々に備えることが有益です。形式からいえば、当方に法律上(あるいは判例法上)問題がある場合であっても、相手方の落ち度や当方の解決に向けての努力・正当性をきちんと主張することができれば、裁判官をこちらの味方につけることができるため、解決が当方の有利に進む可能性が高いです。
できれば、交渉経過を録音しておくことも、相手の矛盾した態度を指摘できるなどの利点があり有効な場合があります(ただし、相手の了解を得ずに行った録音は、裁判上の証拠としては採用されないことになっていますので、裁判上の証拠とするために録音する場合は、必ず相手方の承諾を得ることが必要です。)
2 裁判に訴えることを恐れないこと。また、裁判に訴えられた場合にも十分対応できるだけの準備をすること。
特に裁判に「訴えられる」可能性がある場合、証拠の隠滅・隠蔽工作につい走ってしまい、事態をさらに悪化してしまう場合がありますが、このような行為を行ってしまうと、当方に対する裁判所の信頼を失ってしまい、ますます痛手が大きくなる場合があります。
仮に裁判になった場合には、信頼できる弁護士にこの対応を依頼し、よくコミュニケーションを図りながら、少しでも有利な決着になるよう努められることをお勧めします。