今般発売された「日経ビジネスアソシエ」に、「副業のススメ」と題する特集が組まれておりました。中身を一読したところ、一般的な会社に勤務する社員の方々が、それぞれの趣味等を生かして、会社以外の時間に何らかの活動を行い、それに対する収入を得ることで、結果的に、本業である会社の仕事にもよい影響を及ぼしうるのだ、という趣旨のようです。
副業を行うことで果たして、「本業である勤務先会社の仕事にもよい影響を及ぼすのか否か」という点については、まさにケースバイケースでしょうから、ここでは一般的に議論しません。ただし、副業を行うにあたっては、本業(勤務先での業務)との関係等で、以下のような問題点が発生しうるということを十分ご承知いただければと思い、以下に、副業にまつわる問題点を挙げたいと思います。
1 勤務先会社によっては、就業規則等により副業禁止(会社の業務への専念義務)が定められていることがあり、この場合には、副業を行うこと自体、就業規則違反とされてしまう可能性があること
あくまで、本業である勤務先会社での業務時間外に行うのが「副業」でしょうから、「副業」をしたとしても、本業である勤務先の業務を行っている限りは、勤務先との関係では問題がないかとも思えます。
しかし、勤務先の会社としては、業務時間外の時間については、本業である会社の業務に集中するためにきちんと休養をとる時間として位置づけたいという意図があります。(休日にきちんと休んでいないと、結局会社での業務に支障がでるという考えでしょう)そこで、就業規則で、社員が会社の業務以外の業務を行うことを禁止しているという会社がみられます(伝統的な会社であるほど、このような規定を就業規則に定めていることが多いようです)。
したがって、副業にあまりに熱が入りすぎて本業がおろそかになってしまうと、就業規則の規定を根拠になんらかの懲戒処分(最悪の場合は解雇もありえます)が行われてしまう可能性があります。
本来は、副業を行うか否かを決定する前に、自社の就業規則をよく調べ、副業の禁止規定がある場合には、できれば副業を行うことは避けるべきでしょう。(ただ、昨今は、「本業」である会社においても、不況のため社員に十分な報酬を保証することが出来ないので、むしろ社員に副業を解禁してそちらで稼ぐようにという会社もあるようなので、実際の会社の運用についても観察が必要かもしれません。
2 副業についての税務申告は、すべて自己責任となるため、税務関係の処理については十分注意を払うこと
仮に、副業で相当額の収入を稼いでいる場合には、この収入についても税務申告を行う必要があります。特に住民税については、課税額が変わってきますので、勤務先の給与から天引きではなく、納税の際に「普通徴収」を選択して別途支払うことが必要となります。これを怠ると追徴課税がなされることはもとより、悪質とみなされれば重加算税(本来の税額の上に、ペナルティとして税金額が加算される)が課される場合がありますので、注意が必要です。
3 いわゆる「投資系」の副業など、先行投資額を多く必要とする場合は、生活が破綻しない範囲に抑えること
ときどき、いわゆるFX投資などの投機的な取引の魅力にとりつかれた上、借金をしてまでこれに投資し、結局破産しなければならなくなった方の相談をお受けすることがあります。このようなことがないよう、生活資金と投資資金(副業の元手)はしっかりと区別し、後者が前者を脅かすことのないようにしたいものです。
副業はあくまでも「本業があってこそ」可能なものですから、まずは本業をしっかりと固めることが、「副業」を成立させる鍵といえるでしょう。
弁護士 吉村亮子