1 大麻の敷居
前回のブログで札幌弁護士会副会長が覚せい剤所持で逮捕された事件を取り上げました。そして、その時に、私は、弁護士として最もあり得ない犯罪であると書きました。
しかし、同じ薬物でも大麻は相当数の弁護士が自己使用経験を持っているのではないかと思っています。
その理由として、大麻は覚せい剤と比較すると、極めて敷居が低いことを挙げることができます。また、私の知人の弁護士にも大麻の自己使用経験を持つ人が少なからずいることも理由として挙げられます。
まず、大麻の敷居の低さについて。
さすがに覚せい剤を合法化している国はないと思いますが、大麻に関しては合法化している例があります。確か、オランダでは、大麻は合法な薬物だったと記憶しています。また、大麻は煙草と比較しても毒性が低いという研究報告もあります。日本でも「大麻を合法化すべきだ」という議論があります。
このような状況を裏書きするように、大麻を建前上は違法な薬物として規定していながら、事実上黙認しているような国があります。その代表例がアメリカです。
アメリカでは、大学生でも大麻を吸引する者が少なくありません。日本の一流大学から交換留学でアメリカに来た学生も、ここで大麻を経験することが珍しくありません。アウトローの輩と交際しなくても、キャンパスで友人から入手できてしまうんです。こんな環境で、日本人留学生も周りがやっているからと気が緩み、大した抵抗感もなく大麻に手を出してしまいます。
私がLAに半年ほど滞在していた時、そういう光景を目の当たりにしました。
2 弁護士も大麻
アメリカに留学している大学生だけではありません。
10年くらい前に外国に仕事の関係で滞在していた友人弁護士を訪ねたことがありました。国名を挙げると特定できてしまう可能性があるので、アジアとだけ言っておきます。
その友人のマンションに遊びに行ったら、なんと大麻があったんです。
「外国にいるからって、あんまり調子にのらないほうがいいぞ。この国は、アメリカほど大麻に寛大なわけじゃない。見つかったら間違いなく逮捕されるぞ!」と厳しく忠告しておきました。その後、その弁護士が実際に大麻の使用をやめたかどうかは分かりません。
アメリカは本当にすごいですよ。学生がマリファナ・パーティーを行っていると、たまに警察に踏み込まれるんです。でも、逮捕はされない。直ちに解散し帰宅するように指導されるだけなんですね。これじゃ、誰も大麻の使用を犯罪だとは考えなくなりますよ。
でも、ほかの国はここまで極端ではありません。一応、見つかれば逮捕されます。だって、現地の新聞でそういう記事をよく見ますから。ところが、アメリカほどではないにしても、若者の間でかなり大麻が蔓延している国ってあるんですね。そうした国では、アウトローでなくても普通の若者が大麻をやっている、だから違法であるという感覚がだんだん麻痺してくるんですね。
こういう環境だと、弁護士であっても、外国生活で気が緩み大麻に手を出すなんてことが起こりうるんです。
私から言わせると、大麻を始める動機は煙草に似ているんですね。要するに、好奇心です。私は煙草が好きでかなりのヘビースモーカーですが、別に好きで始めたわけじゃない、単なる好奇心だったわけです。しかし、今ではニコチン中毒になりやめられなくて困っています。
だから、大麻なんてバカバカしくてやる気になれない。単なる好奇心で始めて、その後中毒になってやめられなくなる…。そんなことは煙草で懲りているわけです。加えて、こちらは煙草と違って犯罪です。あまりにも代償が高くつくのでバカらしくてやる気になれません。
でも、外国生活で大麻を始めてしまう弁護士が実際にいたわけですから、たぶんほかにもいるのではないかと思っています。特に、アメリカには相当数いるのではないかと睨んでいます。
しかし、覚せい剤は別です。いくら思慮の浅い大学生や外国生活にうかれた弁護士でも、覚せい剤の使用は聴いたことがありません。
大麻と異なり、覚せい剤のようなハードドラッグは、恐い薬物であるというのが定説です。アウトローの世界にいる人間なら別ですが、普通の人にとって覚せい剤はかなり敷居の高い薬物のはずです。
なので、やっぱり札幌弁護士会副会長が覚せい剤所持で逮捕されたことは、私にとって謎のままです。