こんにちは。長谷川です。
朝は、涼しさを感じる日も出てきましたね。夏が大嫌いで秋が大好きな私としてはありがたいです。
私が定期購読している法曹向け雑誌に、先日、超有名企業の法務部長さんが、企業内弁護士の採用/活用に関する記事を書いていらっしゃいまして、興味深く拝読しました。
その中で「うん、うん」と頷いた箇所の1つに、次のような内容がありました。
- 契約書のチェック/作成というレベルなら、法務部には職人とも言えるレベルの人材が多くいる。
- しかし現代は、契約書レベルで企業が対処すべきリスクを管理できるような時代ではない。企業のリスクコントロールに際して、契約書の文言で片付く等というものは殆どない。
- 従って、契約書のチェック/作成ができるだけでは、法務部員としては役割の半分も果たしたことにはならない。
- 契約に係る案件そのものについて全体をプランニングし、そのプロジェクトに内在するリスクを広く管理できる能力が必要である。(記事との関連では、企業内弁護士採用も、そういった人材を確保する1手段の位置づけである。)
つまり、契約書のチェック/作成レベルなら、法務部員で十分。そういった能力は当然の前提として、コンプライアンスの視点から全体を見渡して適切なリスクコントロールができる能力を、企業は弁護士に期待しているというわけです。
私たちもよく、クライアントの方々から契約書のチェックや作成のご依頼をいただきますし、そういった時は、当然、契約書の内容及びクライアントからの聴取内容から把握される限りで、可能な限りリスクを排除するよう努めます。
ただ、上記2のとおり、現実のリスクは、契約書の文言だけで解決するような甘いものでないわけです。
というのも、契約書というものは、あくまでも、契約締結時(作成時)の当事者の合意を表明したものに他なりませんから、いわば、「過去」の一部でしかないわけです。でも契約にかかるプロジェクト・案件自体は、契約締結時から(場合によってはその前から)ずっと動いているわけです。
動いている「現実」を「過去」の一部分だけで決定的に解決できるはずがありません。
その為、スポットで契約書の作成・チェックを行っても、どうしても、リスクコントロールには限界が出てしまうんです。作成/チェック時に看取できるリスクは可能な限り排除しますが、その後、実際にプロジェクトが動いていく中で発生するリスクは(というか、リスクが発生しているか否かの判断も含めて)、結局のところ、クライアントと、適宜やりとりしていないと分からないんですよね。(やりとりの内容自体は些事が多いとは思うんですが、でもそういった些細なやりとりから、「あれ?」って感じることで、リスクの萌芽を感じ取ることもあるわけです。)
なので、大切な契約であればある程、スポットでの契約書作成/チェックではなく、恒常的に顧問弁護士としてお付き合いさせていただいた方が、万全のリスクコントロールができると思います。
大切な契約やプロジェクトを控えていらっしゃる皆様、リスクコントロールの観点から、是非、顧問契約の締結をご検討下さい。
弁護士 長谷川桃