1 規制緩和と業界再編

 以前もこのブログで、改正薬事法の施行により、店舗に登録販売者を置けば、多くの一般医薬品をコンビニでも販売できることを書きました。
 そして、改正薬事法の施行により、コンビニとドラッグストアとの間でも熾烈な競争が始まるだろうと書きました。

 しかし、2009年8月24日日経新聞(朝刊)に、驚く記事を見つけました。
 同紙の一面トップの見出しには、

 「ローソン、マツモトキヨシ提携」とあります。

 「そうか、その手があったか…」と感心しました。

 同紙によると、マツモトキヨシは、ドラッグストアの業界トップで、連結ベースで約3900億円を売上げ、970店舗を擁しています。
 他方、ローソンは、コンビニ業界では2位。売上は、1兆5600億円で国内に9500店を擁しています。

 ちなみに、ドラッグストア業界では、マツモトキヨシに続いて、2位がスギホールディングスで売上2700億円、670店舗、3位がツルハホールディングスで売上2500億円、840店舗、4位がカワチ薬品で売上2300億円、180店舗、5位がサンドラッグで売上2300億円、580店舗です。

 これに対して、コンビニ業界では、トップがセブンイレブン・ジャパンで売上2兆7600億円、1万2300店舗、2位が前述のようにローソンで売上1兆5600億円、9500店舗、3位がファミリーマートで売上1兆3300億円、7400店舗、4位がサンクスで売上1兆1000億円、6200店舗、5位がミニトップで売上3000億円、1800店舗と続きます。

2 業務提携の意図

 さて、私はてっきりコンビニ業界とドラッグストア業界が医薬品の販売を巡って激しい競争関係になるとばかり思っていたので、正直驚きました。
 でも、よく考えると、なるほどと納得できます。

 なぜ、ローソンとマツモトキヨシは業務提携に踏み切ったのでしょうか?
 ここからは、私の推測になります。

 まず、ローソンの戦略。
 いくら薬事法が改正され、コンビニで医薬品を販売できるようになったといっても、ローソンは医薬品についてずぶの素人です。コンビニを医薬品で埋め尽くすわけにはいきませんから、どのような医薬品をどの程度店舗に置くのか決めなければなりません。
 しかし、いかんせん素人ですから、それを決定するマーケティング情報が不足しています。
 そこで、業界トップのマツモトキヨシと組めば、充実したマーケティング情報を手に入れて、他の競合他社よりも有利に事業展開できるはずです。これはローソンにとってかなりおいしい話です。

 他方、マツモトキヨシにとってはどうか。
 マツモトキヨシは、業界トップとはいえ、店舗数は970店舗。ローソンの国内店舗数は9500店舗ですから桁が違います。
 医薬品の量販店としては、ローソンの国内店舗数のネットワークを利用できるのは悪くない話。しかも、規制緩和により、時間の問題でコンビニ業界が脅威になるのは目に見えています。ならば、その前に手を組んでおこうと考えるのも無理はありません。

3 業務提携のスキーム

 業務提携といっても、どのように進めるのでしょうか?

 前述の日経新聞によると、両社は年内にも共同出資会社を設立して、来年の春からコンビニとドラッグストアを融合した新型店舗を出店していく予定だそうです。
 これは、両社が強固な提携関係を目指していることを示しています。なぜならば、共同出資して会社を設立し、共同で店舗を出店しくということは、簡単に両社の提携関係を解消できなくなるからです。
 かなりの「本気度」が伝わってきます。

 コンビニ業界トップのセブンイレブンとしては、これを指をくわえて見ているわけにはいかないでしょう。
 ちなみに、セブンイレブンは、ローソンに先駆けて、調剤薬局の大手であるアインファーマシーズと業務提携を結んでいますが、資本提携にとどまり、ローソンのように薬局とコンビニが融合した新しいタイプの店舗を出店するというところまでは行っていません。

 ファミリーマートやサンクスも、指をくわえて見ているわけにはいかないでしょうね。
 今後、小売業界の再編が加速するのではないかと思います。