1.企業が農業に投資できる時代

 ご承知のように、日本政府は長い間(そして、今も)農業については保護主義政策を堅持してきました。ウルグアイ・ラウンドでも日米二国間交渉でも、いつも紛糾するのは農業問題です。
 FTAについても、とりあえずシンガポールと……。

 シンガポールは、①そもそもが自由貿易立国であること、②面積も小さく人口も少ない都市国家であること、③農業問題が横たわっていないこと、等の理由にFTAを締結しても弊害がない判断されました。でも、逆に言えば、FTAを結ぶメリットも大きくありません。

 思えば、なぜ日本政府がここまで日本の農家を保護するのかというと、日本の農業に国際競争力がないためです。
 しかし、もし企業が農業の分野に参入できるとなると、当然、旧態依然とした農業経営が現代的な企業経営に変わり、日本の農業も国際競争力を持てるくらい強くるのではないか、という期待が長い間ありました。
 そして、ついに企業による農業への投資が現実的になりそうなのです。
 農地法の改正案は、既に衆議院で可決され、今、参議院で審議中だからです。無事、参議院でも可決されれば、農地法の改正実現です。

2.改正のポイントと今後の展望

 これまでは、企業が市町村が指定する農地に限って、企業による農地の借り入れが認められてはいたのですが、実際に指定されている農地は、いわゆる耕作放棄地が多かったため、企業のニーズに応えたものではありませんでした。

 ところが、今回の改正で農地の貸借が原則として自由化されることになるのです。

 もっとも、「企業が農地を借り入れる場合には、役員の1人以上が農業に常時従事しなければならない」などという条件がちゃっかりついています。
 このような条件がつけられているのは、おそらく現在の小規模農家への抵抗をかわすためだと思います。
 というのは、この条件を満たすために借り入れる企業の役員の誰かが常時農業に従事するというのは非現実的ではないからです。おそらく対応としては、貸付側の農家の有力人物を取締役として経営に関与させることになるでしょう。

 このような条件は、農業に本格的な投資をしようとしている企業にとって、大きな障壁にはならないと思います。農家の誰かを1人取締役にしてあげればよいだけですから。
 また、実際問題として、企業が農業に本格的に進出するのはこれからで、農業のプロがいないわけですから、農家出身者を役員として招くこと自体は、それほど無駄ではないと思います。