1 特定政党・候補者の支持推薦は公職選挙法違反?
来る8月31日、いよいよ国政選挙です。もう皆さん、誰に投票するか決めましたか?
今回の選挙は、報道にもあるように、ついに政権交代が実現するかもしれないという選挙で、そこそこ盛り上がりそうです。
インターネットを開くと、ブログなどで特定政党や候補者の支持を表明し、第三者に投票を促したり、推薦するなどの書き込みを見かけます。
中には、ある候補者を支持する具体的根拠を述べるなどしている書き込みもあり、質の高い意見もあるようです。
しかし、気をつけてください。実は、そのような書き込みが公職選挙法違反になるおそれがあるのです!
というのは、公職選挙法が選挙管理委員会の証紙が貼ってあるチラシ・法定はがきを除いて、特定の政党・候補者の支持・反対を表明する文書図画の配布を禁止しているからです。
実際に、警察から警告も出ているようです。
警視庁によると、2000年6月の衆議院選挙でホーム・ページに対する公職選挙法違反の警告が出されて以降、今月14日までに国政選挙と統一地方選挙で約70件の警告が出ているそうです(2009年8月21日付日本経済新聞朝刊)。
また、総務省も同様の立場を示しているそうです(同紙)。
2 憲法違反のおそれもあり!
確かに、公職選挙法は、文言上、当該規制を候補者や選挙関係者に限定はしていないので、一般市民にも同様に適用されると考えるのが素直です。
しかし、そもそも公職選挙法が告示後に同法が定める方法以外で特定の政党・候補者の支持表明等を禁止しているのは、立法当時、候補者の政治的意見を有権者に伝える手段・媒体が限定されていたため、公平を期すためです。そうした理由から、テレビの政見放送や選挙で使用できるはがきの枚数も決められているわけです。
このような規制をしないと、経済力のある候補者が宣伝に多額の資金を投じて有利な選挙戦を展開できるようになってしまう。それでは公平な選挙とは言えない。これが公職選挙法の立法趣旨なんです。
そうすると、公職選挙法は、そもそもインターネットのような媒体を想定しておりませんから、インターネット上で市民が自由に政治的意見を述べることまで禁止しているとは到底思えないのです。また、これを許したからといって、特定の候補者に有利・不利は生じません。経済力があろうとなかろうと、誰でも利用できる媒体ですから…。
そうすると、告示後であっても市民の自由な政治言論を規制する公職選挙法が憲法21条の「表現の自由」を侵害し違憲であると判断される可能性だって十分にあります。
また、合憲限定解釈もありうるでしょうね。そもそも公職選挙法は、インターネットによる言論活動を想定していませんでした。だから、政党間や候補者間の公平を期すために、告示後の文書・図画を規制するのには、一定の合理性がありました。
したがって、いきなり違憲と判断するのも行きすぎなので、インターネットという媒体を、公職選挙法上の「文書・図画」に該当しないと解釈することも十分ありうる法解釈だと思います。
警察もこのような事情に配慮して、慎重になっているんだと思います。下手に逮捕して刑事事件になり、無罪判決なんかが出たら、それこそ警察の面目丸つぶれですから…。