こんにちは。弁護士の吉成です。

 前回、債権回収の具体的な方法について、お話しをさせていただきました。
 しかしながら、支払が滞るということは、その時点で、既に相手方の財務状況が極めて悪化している可能性も低くはありません。仮に、訴訟をして勝ったとしても、回収ができず、費用と時間をかけた分だけ無駄になってしまうということもあり得ます。
 その意味で、債権回収の基本は、回収できないような債権を作らないことといえます。

 ところで、回収できないような債権を作らないためには、取引開始前に相手方について事前調査をしておくことが重要だと言えます。

 この事前調査には、以下のような手段があります。

(1) 相手方の商業登記簿謄本のチェック

 相手方が会社を名乗っていながら、登記されていないなどということになれば、怪しさ満載です。
 登記がある場合には、代表取締役の交代、取締役の辞任、本店移転、過去の増資の有無などを見て、おかしいところがないかチェックします。
 また、登記簿の記載そのものを見るだけでなく、担当者の話が、登記簿の内容と矛盾していないか等も信用性判断の材料になります。

(2) 不動産登記簿のチェック

 取引先の営業所や工場等,役員の住所地等の不動産の登記状況を確認します。
 これで、一つには、取引先の資産、担保権の設定可能性、役員を保証人する場合の資力等の判断根拠となります。
 また、所有者や担保権、差押え等の有無、担保権の設定時期、金額等から取引先の財務状況の考慮要素にもなります。

(3) 財務諸表のチェック

 利益が出ていても、急激に業績が悪化しているような企業は要注意ですので、少なくとも連続3期分以上を取得するのが望ましいです。

(4) 税務申告書写しのチェック

 財務諸表には粉飾の恐れもあるので、税務申告書の写しを取得できれば、より相手方の正確な財務状況をつかみやすいということになります(税金を払ってまで粉飾することはあまりないので)。

 この他にも、信用調査機関の活用などの方法もあります。
 また、風評、業界内での評判、役員や担当者等の話、人柄、会社の雰囲気などといった情報も信用性判断の根拠になり得ますので、様々なチャンネルを活用して多くの情報を集めることが望ましいといえます。

弁護士 吉成安友