1 過払訴訟
2009年8月8日発効の「週刊ダイヤモンド」(第97巻32号)に興味深い記事が掲載されていました。
「過払い返還請求訴訟」をめぐる弁護士・司法書士の縄張り争い
と題して、取り上げられています。
簡易裁判所の訴額は、140万円までに制限されています。したがって、訴額が140万円以内におさまれば、簡裁代理権を有している司法書士であれば、訴訟代理人になれます。
ところが、近年、債務が消費者金融に請求する過払い返還請求訴訟で問題が起こっているようです。
同紙が消費者金融関係者からの取材で得た情報によると、
「実際には200万円ほど過払い金が発生する案件なのに、わざと請求額を140万円以内に収めて通知してくる司法書士もいる」
そうです。
また、140万円を超える案件を扱う際に、
「あくまでも書面作成代行をしているだけです」
と言い張る司法書士もいるようです(同紙調べ)。
さらに、訴額が140万円を超え、地裁に係属してしまった場合には、司法書士が代理人になれないことから、
法廷に立てない司法書士が傍聴席に陣取り、…(中略)…オロオロする債務者にヤジを飛ばして指示を出すという光景(同紙調べ)
もあるとか。
2 なぜ司法書士がプチ弁護士化するのか
もともと、訴訟は、弁護士の専売特許だったのが、士業間の規制緩和により、簡易裁判所に継続する訴訟についてだけ、司法書士も代理人として参加できるようになったんです。
従来、簡易裁判所で行われている訴訟には、いわゆる本人訴訟(弁護士が代理人についておらず、当事者が自分で訴訟活動を行っている訴訟)も多く、おそらく弁護士界としては、司法書士に簡裁代理権を付与してもさしたる問題は起こらないと楽観視していたんでしょう。
しかし、簡裁代理権というのは、単なる「訴額」による制限だけで、取り扱い分野に関しては制限を加えていません。家裁や地裁に専属管轄が生じる一部の案件を除けば、司法書士は、弁護士と同様に広範囲の法律問題を取り扱ってもよいというのに等しいんです。
例えば、企業の顧問業務。これなんかも、日々の業務は、法律相談や契約書のチェックですから、地裁の代理権なんていりません。140万円以内の訴額に収まれば、企業の代理人になれるわけです。
たまたま、過払い金返還訴訟で弁護士と司法書士の利害がぶつかったために問題視されていますが、今後、企業顧問、コンプライアンス業務、交通事故、医療過誤、不貞行為の相手方に対する損害賠償請求など、多方面にわたってこの問題が波及すると思います。
そうなると、司法書士は、従来のような不動産登記、商業登記の専門家ではなく、法律問題全般を扱えるプチ弁護士になる可能性が大きいと思います。