1 国家百年の計というけれど…
「国家百年の計」という言葉があります。
政治家たるもの、百年先の国家の行末まで思いをめぐらさなければならないという意味です。
でも、私は、百年先のことまで考えている政治家なんて胡散臭くて信用できません。
だいたい、「選挙に当選してから政治の勉強を始めます」なんて言う国会議員もいるんですから、4~5年先のことを考えてくれていれば立派です。百年も先のことなんて考えなくていいから、選挙で公約したことを任期中にちゃんとやってください、と言いたいですね。
政治の話をしていると腹が立ってくるので、このくらいでやめておきます。
本論に入ります。
経営者って、何年くらい先のことまで考えるべきなんでしょうか。
私は、いろいろ考えた結果、せいぜい5年くらい先のことを考えれば十分であるという結論に達しました。企業の経営計画で言うと、中期経営計画というところですかね。それ以上長期のことを考えているとすれば、ただの無責任だと思います。
実は、このような結論に達するのには、紆余曲折がありました。
2 100年先を考えるからこそ、5年先しか考えない。
私が経営している法律事務所は、弁護士が私ひとりから始まって、現在では弁護士10名の法律事務所に成長しました。
ひとりでやっていたころは、私にとって、弁護士の仕事は自分の生活のための「自営業」でした。
しかし、顧客の数が増え、弁護士の数が増えて、法律事務所としてだんだん成長してくると、このまま成長し続けてほしいと考えるようになりました。50年先も100年先も成長し続けて、多くの顧客から支持され続ける法律事務所になってほしいと考えるようになりました。
しかし、そうすると、はたと考えてしまう…。50年先なんて、私はこの世にいるんだろうか。私はいま46歳なので、50年後は96歳です。あまり自信ないです。仮に生きていても、96歳じゃまともに仕事なんてできないと思います。ましてや、100年後なんて、この世にいるはずがない。
そうすると、経営者として100年後も事業が成長してほしいと考えるのであれば、後継者を育てるしかないという結論に達しました。100年後に生きてるはずがない。50年後だってあやしい。だったら、早いとこ後継者の育成に取りかかって、先のことは後継者に考えてもらえばいい、そう考えるようになりました。
このような考えに至ると、経営者として、突然肩の荷が下りた感じがしました(笑)。そうか、俺が全部考える必要ないんだ。50年先や100年先のことなんて考える必要なんか全然ないんだ。そんな先のこと後継者に考えてもらえばいいや、と思えるようになったんです。
「じゃ、俺は何年先まで考えればいいんだ?」
そこで、私はせいぜい5年という結論に達しました。これだけ社会が目まぐるしく変化し、不確実性が大きくなっている社会で、10年も20年も先のことを考えるなんて無責任だ。仮に考えたとしても、10年後には社会の環境も変わっていて、考えたことが通用しなくなる。そんな無駄なことに頭を使うんだったら、自分がやれそうな現実的なスパンで考えよう。そうすると、せいぜい5年先までだな、という結論になりました。
3 壮大な事業を志すなら、中期でものを考える
ある種のパラドックスです。
自分が経営している法律事務所が順調に成長したいま、私にとって、法律事務所という事業は、単なる自営業から壮大な事業に変わりました。
そして、壮大な事業に変わると、自分の死後のことも考えるようになりました。
自分の死後のことを考えるようになったら、今度は、後継者のことを考えるようになりました。
後継者のことを考えるようになったら、自分のできる範囲のことだけ考えればいいと割り切れるようになりました。
今の私の最大関心事は、5年先までの中期事業計画と後継者の育成です。まだ46歳ですが、今から後継者育成を考えないと、いざというときに組織が傾きます。顧客に迷惑がかかります。職員も失業します。決して早すぎることはないと思います。後継者の育成は、組織の未来を左右する大きな仕事ですから。