1 成功要因

 KSFとは、経営学で使用される用語で、英語の”Key Success Factor”の略です。

 内容は、企業を成功に導く核となる成功要因という意味です。経営の世界では、このKSFを明らかにすることから始まります。
 なぜかというと、KFSは業種や企業規模によっても異なるからです。
 ビジネスの世界では、「良いモノを作れば売れる」という単純な世界ではありません。まさに、自分たちのビジネスにとって、何がKSFとなるのか、これを明らかにしないと、ヒト、モノ、カネという経営資源をどのように投入すればいいのかが決まりません。

2 コカコーラの例

 コカコーラは言うまでもなく清涼飲料水の分野では文句なくトップ企業です。

 でも、商品開発力において、本当にトップといえるか私には疑問があります。

 コカコーラの商品で思いつくブランドをちょっと挙げてみましょう。
 ジョージア、アクエリアス、爽健美茶、リアルゴールド…。私たちに馴染みのある商品ばかりですよね。
 実は、この商品群に共通したことがあります。それは、どれも先駆け的商品ではないという点です。缶コーヒーに関して言うと、ジョージアよりもUCCやポッカのほうが先駆けです。アクエリアスよりはポカリスエットのほうが先駆けですよね。リアルゴールドとの対比では、オロナミンCのほうが先輩です。

 つまり、コカコーラは、他社が先駆けて商品を開発し市場でテスト済みのものを遅れて商品化してるんですよ。ですから、競合他社に比べて、コカコーラの商品開発力が抜群に秀でているとは言えないんです。
 ちゃっかりしてるんですね(笑)。

 もうひとつの共通点はシェアです。
 先駆け的商品でない割には、コカコーラのシェアは、どれもトップか、悪くても2位以内におさまるという好成績なんです。商品を先駆けて開発した他社は、後から出てきたコカコーラに市場を奪られちゃってるわけです。

3 コカコーラのKSF

 では、後からしゃしゃり出てきたコカコーラがなぜシェアを伸ばせるのか。その秘訣はコカコーラのチャネル戦略にあります。

 コカコーラは、チャネル戦略の一環として、コカコーラの商品を売り込むことを使命とするボトラーズをいくつも抱えています。
 また、自動販売機の設置数もすごいんです。
 要するに、消費者が最も購入しやすくするような販売チャネルに経営資源を投入しているわけですね。「何を作るか」ではなく、「如何にして消費者に商品を近づけるか」に力点が置かれているんです。

 このことから分かることは、清涼飲料水のような商材は、商品開発力よりも、はるかに「チャネル」のほうが重要だということです。しかも、強固なチャネルの構築は一朝一夕ではできません。「そうだったのか、ではうちも真似しよう」と言ってすぐにできることではありません。その意味では参入障壁は高く、コカコーラの競争優位性になっています。

 コカコーラの例を参考にして、自分のビジネスを捉え直すと、新しい発想が出てくるかもしれませんよ。