1 ワーキング・キャピタル(WC)とは?

 ワーキング・キャピタル(WC)とは、簡単に言ってしまえば、「運転資本」のことです。
 なんだ、そんなこと誰でも知っているよ、と思われるかもしれませんが、実は、このWCをしっかり管理して債権回収スキームを構築している中小企業はそれほど多くはないと思っています。

 なぜWCの分析が重要なのかを論じる前に、そもそもWCとは何かを明らかにしたいと思います。そうすれば、なぜWCが債権回収と関連するのかが明らかになるからです。

 製造業を例に考えてみましょう。
 製造業では、まず原材料を仕入れることから始まります。もちろん、仕入れ代金がかかります。原材料を仕入れた後、それを加工して製品を作ります。当然、加工に伴い人件費などの経費がかかります。こうして製品が完成しても、すぐにお金になるとは限りません。通常は、在庫になります。そして、この在庫となった製品を販売します。販売して初めて売り上げになるわけです。しかし、販売したからといって、すぐにお金が入るとは限りません。代金後払いの場合も少なくないからです。

 以上を時系列で整理すると、次のようなフローになります。

 仕入れ→加工→在庫→販売→代金回収

 現金は、この最後の代金回収で入りません。しかし、仕入れから販売までの過程で様々な経費がかかります。これらの経費を販売代金で賄うことができない。  そこで、仕入れから代金回収までのタイムラグをつなぐ資金が必要になります。これがWC(運転資本)です。

2 WCと債権回収の関係

 以上から、WCとは、原材料の仕入れから債権回収までのタイムラグをつなぐための資金であると定義できます。  言いかえると、債権を回収できるまで(つまり、現金がはいるまで)、どのくらいの資金が必要か、という問題です。  そうすると、WCとして必要な資金は、次の式で求めることができます。

 WC=(売掛金+受取手形+在庫)-(買掛金+支払手形)

 この差額が、必要となるWCとなり、これが不足すると、黒字倒産の危険にさらされます。
 ここまでくれば、WCと債権回収の関係がわかると思います。
 つまり、債権回収のサイトが長ければ長いほど、現金化に時間がかかることを意味しますので、それだけ余分にWCが必要になってしまいます。
 それだけではありません。実際のWCは、上の計算式で求められた金額以上のお金が必要になります。
 というのは、上の計算式では、債権が回収できることを前提としています。
 しかし、現実には、一定の不良債権が発生します。したがって、この不良債権も想定してWCを準備しておかなければなりません。
 また、不良債権は、サイトが長ければ長いほど、その発生率も高まりますので、それだけ余計にWCが必要になってきます。

したがって、
・まず、自社の十分なWCがいくらかを見積もる。
・十分なWCを準備するのが負担となっている場合、
 →仕入れから債権回収までの流れを短縮化できるようにオペレーションを改善する。
 →不良債権発生率を下げるためのスキーム(取り立てを含む)を構築する。
ことが急務な課題となってきます。

 私の経験では、ここまでしっかり分析している中小企業は多くはありません。
 御社は大丈夫ですか?