最近中国国家税務局の通達動向

① 2009年7月上旬、各地方の税務局に対して、外資企業の移転価格管理を強化する通達を出した。

② 2009年8月4日、各地の税務局に対し、株式など権益売買や不動産業、タックスヘイブン対策などに関わる徴税管理を強化するよう求める通達を発令した。

背景

① 中国徴税システムの不備

 各地方税務局ごとにノルマがあり、ノルマ達成以上にあまり動かない(ノルマを達成してしまうと、翌年度により高いノルマを投げられてしまうため)。従って、景気が良いとき、税務局の企業に対する徴税検査は象徴的なものが多くて、内部統計によれば、1/4の徴税すべき税金が実際に徴税されてなかった。

② 国家財政の悪化

 2009年の1月から6月まで、国の財政収入は去年同期より9%程度低減している一方、実質的に100兆円近い大型財政支出は大きな負担となっている。

③ 地方財政の大幅悪化

 一部の地方政府は公務員に対する給料の支払い遅延のケースも出ている。
 これを背景に徴税検査をさらに踏み込んで強化する当局の姿勢が顕著になりつつある。同局はまた、追徴課税などの徴収についても、今年通年の徴収目標を昨年の2倍に設定したという。

徴税強化対象

 今回当局は徴税管理強化の対象として、◇海外登録企業が株式・権益売買を通じて税金を逃れる企業◇タックスヘイブンを利用し、特に来料加工を装って租税回避する企業◇不動産業関連で脱税を狙う企業――などとしている。

 当局は、追徴課税などの目標を、罰金や滞納金を含めて昨年度の約2倍に当たる計1,000億元(約1兆4,000億円)と設定。税収の減少が深刻化するなか、追徴課税や罰金で税収増を支える方針とみられる。当局は昨年、全国の企業40万5,000社を対象に検査を実施、追徴課税や滞納金、罰金などの支払い総額は計513億6,000万元に達している。今年は当初の目標を700億元に設定、可能であれば800億元を目指すとしていたが、ここにきてさらに大きく引き上げた形だ。

外資系企業

 国家統計局は2007年の数値として、中国で赤字を計上している外資企業のうち、3分の2は利益を不正に海外に移した結果の赤字だと指摘、税収への影響は300億元規模に達すると試算している。

中国事業推進室長 宋煒

著者プロフィール
 宋煒 、経営学博士(横浜国立大学卒)、中国弁護士、2002年から日系企業の経営・法律の顧問を担当しています。 2006年、中国司法省認定の全国優秀弁護士事務所である煒衡(イコウ)弁護士事務所に入り、2007年、中国弁護士資格を取得し、2008年、日中弁護士事務所の戦略提携により、弁護士法人ALGに移動しました。