1 三重派遣で事業停止命令
東京労働局が、平成21年7月23日、人材派遣業を営む「辰星技研」に対し、1ヶ月の事業停止命令を出しました。
2009年7月24日付の毎日新聞(朝刊)によると、辰星技研は、他の人材派遣会社6社から受け入れた派遣労働者約28000人を別の会社に派遣(二重派遣)、うち約8300人については三重派遣状態だったそうです。
2 二重派遣の禁止について
労働者派遣法は、いわゆる二重派遣を禁止する明文規定を置いていません。
しかし、職業安定法(職安法)が労働者供給を違法な行為として禁止しています(同法4条6項、44条)。そして、同法は、労働者供給に関し、
「この法律で労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法2条1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まない」
と規定しています(同法4条6項)。
したがって、いわゆる二重派遣は、形式上労働者供給に当たるので、労働者派遣法上の労働者派遣に該当しなければ、違法な労働者供給になってしまいます。
そうすると、二重派遣においては、自己が雇用していない労働者を派遣することになるので、労働者派遣法上の労働者派遣とは評価できないことから、職安法が禁止する労働者供給に該当するというのが一般的な解釈です。
A社 → X社 → Y社
派遣 派遣
これが二重派遣の典型ですが、派遣労働者を雇用しているのはA社です。X社は、A社から見れば派遣先にすぎず、派遣労働者を雇用してません。
それなのに、X社がY社に派遣すると、X社は自己が雇用していない労働者を派遣していることになります。
このような事態がどのような場合に起こるのかいうと、例えば、X社がY社から労働者派遣のオファーを受けたが、そのオファーに見合う派遣労働者を人材として抱えていない。そこで、Y社の希望にそうような人材を別の派遣会社から調達し、それをY社に派遣してしまうという形で起こります。
今回、事業停止命令を受けた派遣会社は、このX社の立場になります。
しかし、このような二重派遣は違法行為ですので、十分注意してください。