こんにちは、前田です。

 今日は、前回ご紹介した、個人情報の利用目的等を通知・公表する場合の適用除外(つまり通知・公表しなくてもいい場合)を説明します。

 個人情報保護法18条4項に、その規定があります。
 即ち、利用目的を定め、通知・公表する場合(同条1項)、利用目的を明示する場合(同条2項)、利用目的を変更した場合の変更後の利用目的を通知・公表する場合(同条3項)について、これらをしなくていい場合は以下のとおりです。

① 利用目的を本人に通知又は公表することで、本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
 →取得した総会屋の情報の利用目的を本人に通知・公表することで、総会屋の逆恨みによって情報を提供した第三者が被害を被るおそれがあるようなケース

② 利用目的を本人に通知又は公表することで、当該個人情報取扱事業者の権利又は正当な利益を害するおそれがある場合
 →通知・公表される利用目的によって、当該個人情報取扱事業者が行う新商品等の開発内容、営業ノウハウなどの企業秘密にかかわるものが明らかになってしまうケース

③ 国の機関や地方公共団体は法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合に、利用目的を通知・公表することで当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合
 →刑事事件の被疑者が立ち寄りそうな会社に、警察が被疑者の個人情報を提供する場合、被疑者に対して当該個人情報の利用目的を通知・公表してしまうと、警察の捜査活動に重大な支障が及ぼされるケース

④ 取得の状況から、その利用目的が明らかであると認められる場合
 →商品・サービス等を販売・提供する際に、住所・電話番号等を取得することがあるが、この利用目的が商品・サービス等の販売・提供のみを確実に行うためというケース
 →名刺交換をする場合、これは書面による個人情報の取得ということになるが、その利用目的が今後の連絡のためというケース・・・・・ただし、ダイレクトメール等の目的に名刺交換の際の情報を利用することは、自明なものとは言えず、利用目的の明示が必要であると思われる。

 また、利用目的以外の目的で個人情報を利用したい場合、本人の同意を得なければなりませんが、この場合にも適用除外(法18条4項)があります。
 即ち、

① 法令に基づく場合
 →刑事訴訟法218条(令状に基づく捜査)や地方税法72条の7(事業税にかかる徴税吏員の質問検査権)等、法令上強制力を伴う調査に答える場合
 →刑事訴訟法197条2項(捜査に必要な取り調べ)は、強制力はないが、法律上規定があるため適用除外に該当する。
 →弁護士法23条の2(弁護士会照会)も、強制力はないが、照会に必要性・合理性があればこれに該当する。

② 人の生命・身体又は財産の保護のために必要がある場合で、本人の同意を得ることが困難な場合
 →急病その他緊急事態の時に、本人について、その血液型・家族の連絡先等を医師や看護師に提供する場合等

③ 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
 →健康保険組合等の保険者等が実施する健康診断やガン検診等の結果や受診状況を、個人名を伏せた上で、健康増進施策の立案や事業の効果の向上を目的として研究者等に提供するケース
 →不登校等の児童生徒の問題行動につき、児童相談所や学校、医療行為等の関係機関が連携して対応するために、当該関係機関の間で当該生徒の情報を交換するケース

④ 国の機関や地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合に、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき
 →事業者等が警察の任意の求めに応じて個人情報を提供するようなケース

 以上が適用除外ということになります。
 ブログの要領の関係上、利用目的の具体的な定め方については、次回に譲らせていただきます。。。

弁護士 前田瑞穂