1.9年間の弁済率データ

 民事再生法が施行されてから9年が経過しましたが、実際に民事再生の現 場では、その程度の弁済がなされているのか、気になるところですよね。

 帝国データバンクが発行している「帝国タイムス」(2009年5月15日)が、以下の通り、この9年間の弁済率をまとめております。

件数構成比
10%未満75件46.0%
10%~30%未満77件47.2%
30%~50%未満8件4.9%
50%~75%未満0件0.0%
75%以上3件1.8%
合計163件100.0%

2009年5月15日付「帝国タイムス」(株式会社帝国データバンク発行)

2.コメント

 ある意味予想通りです。
 民事再生法を使って債権カットを行うわけですから、弁済率がそんなに高いはずがありません。
 この資料を見ても分かるように、30%未満が93.2%にも及びます。

 もっとも、少し驚いたのは、10%未満のゾーンよりも10%~30%未満のゾーンのほうが、弁済率がわずかに上回っている点です。
 しかし、この資料からは確実なことは言えませんが、10%~30%未満のゾーンの実際の内訳は、結構10%に近いものが多いのではないかと推測しています。
 実務の現場感覚では、30%に近い弁済率よりも10%に近い弁済率のほうがずっと多いのではないか、という印象です。
 それは、30%~50%のゾーンになると4.9%と極端に低い弁済率を示していることからも納得がいきます。すなわち、30%をわずかでも超えると、弁済率は4.9%と大幅に減少しているからです。

 また、10%未満も46%に達していますので、この数字も無視できません。
 10%未満ということは、弁済率が一桁台ということです。5%程度なのか8%なのかはわかりませんが、民事再生法では清算価値保証原則がありますので、どんなに低い弁済率でもよいわけではなく、一定の歯止めはかかっています。また、あまりにも低すぎると、債権者も納得できませんから、債権者の賛同を得るのが難しくなります。
 そうすると、10%未満の弁済率といっても、比較的10%に近いものが多いのではないかと思います。

 したがって、大雑把な捉え方としては、10%前後に集中しているという理解でよいのではないか、と考えます。私たちの法律事務所でも、10%前後が多いという印象です。

 ところで、75%以上の弁済率が1.8%とはいえ、3件もあるのには驚きました。そんなに弁済できるのであれば、民事再生法を使わずに、私的整理でやれなかったのかな、という印象です。

3.民事再生の今後

 事業再生の分野はどんどん進化しております。
 民事再生法を適用する場合も、スポンサー型が今後主流になる可能性がありますし、また、事業再生ADR(裁判外紛争処理手続)も今後広がりを見せるでしょう。

 このような事業再生の分野の発展は、今後の民事再生法の利用頻度や弁済率にも大きな影響を与えることになると思います。