1.お弁当の値下げとコンビニ経営

 公正取引委員会は、2009年6月22日、セブンイレブン・ジャパンに対し、同社が加盟店であるコンビニに対して値下げ販売を禁止していた行為について、排除措置命令を出しました。
 今回は、セブンイレブンがやり玉になりましたが、コンビニのお弁当の販売価格に対するフランチャイザーの統制は、この業界の商慣習となっているそうです。
 したがって、当然ながら、セブンイレブン以外のコンビニ各社やその加盟店に大きな影響を与えることになりそうです。

 加盟店であるコンビニは、通常、売れる見込みの数よりも多めにお弁当を仕入れます。
 なぜならば、品揃えが豊富でなければお客が離れ、売れるお弁当まで売れなくなるからだそうです。
 しかし、そうすると、当然売れ残りが発生します。
 この売れ残りを最小限に食い止める有効策が、賞味期限が切れる直前の値下げ販売です。
 アパレル業界ののセールに似てますね。衣類は別に腐りませんが、流行があるのでできれば今シーズンに完売したい。これに対し、お弁当の場合は、流行とかは関係なさそうですが、食べ物なので腐ります。在庫として長期間置いておくわけにはいきません。
 したがって、賞味期限が切れて廃棄するくらいなら、これを値下げして完売したいわけですね。加盟店の経営者としては、極めて当然の在庫管理です。

2.コンビニ業界のロイヤルティーの構造

 コンビニ業界のロイヤルティーは、一般的には次のようになっています。

・ロイヤルティーは、コンビニの売上額から商品の仕入原価を差し引いた粗利益に対して、一定の割合(例えば、30%)をかけて算出する。
・仕入額は、加盟店が全額負担する。
・商品の値下げは禁止。

そうすると、当然

・売れ残り廃棄処分となったお弁当は、加盟店の負担となる。

 これは、加盟店にとっては、かなり厳しいビジネスモデルですよね。ロイヤルティーを計算する対象となる数字が「粗利益」ですから、廃棄処分となったお弁当の負担は、加盟店だけにのしかかります。
 値下げによる販売を禁止しておきながら、その負担は自分に来ないという、コンビニ各社にとって都合のよいビジネスモデルになっています。

3.コンビニ競争激化

 今回は、このように廃棄したお弁当の負担を加盟店に押しつけ、値下げ販売を禁止してお弁当の価格を統制していたセブンイレブン・ジャパンに対し、公取委が排除措置命令を下したわけです。

 しかし、コンビニにとって、必ずしも朗報とは限りません。
 確かに、賞味期限切れ直前の値下げ販売で在庫を処分するという点で言えば、適切な在庫管理が可能となりますのでメリットですが、他のコンビニ加盟店も同じように値下げ処分をするはずなので、価格競争が激しくなることが予想されるからです。

 公取委の立場からすれば、競争大いに結構ということになるんでしょうね。そもそも、独占禁止法という法律の目的が、競争を抑制するような行為を禁止することにあるわけですから。

 これからは、価格競争をめぐっていかに勝負するかでコンビニ加盟店の実力が問われることになります。