民事再生法が施行されて9年が経過しました。
 前回も書きましたが、過去9年間の申立件数は、7098件でした。
 そこで、今回は、7098件の内訳を業種別に見てみたいと思います。

件数構成比
建設業143120.2%
製造業154621.8%
卸売業97013.7%
小売業102014.4%
運輸・通信業2643.7%
サービス業合計
ゴルフ場経営
パチンコ店経営
病院・診療所
旅館・ホテル
その他
1474
402
117
87
198
670
20.8%
5.7%
1.6%
1.2%
2.8%
9.4%
不動産業2884.1%
その他1041.5%
合 計7098100.0%

出所:帝国タイムス(旬刊2009年5月15日第13303号)
発行所:株式会社帝国データバンク

 これを見ると、申立件数全体の約22%近くを製造業が占めています。
  また、これに続く建設業も約20%ですから、製造業と建設業だけで40%を超えています。
  製造業や建設業ほどではありませんが、卸売業と小売業も13%~14%台なので、無視できない数値だと思います。
  サービス業については、全体を見ると約21%と大きい数値が出ていますが、サービス業をさらに細かく見ると、その数値は決して大きなものではありません。
  意外だったのは不動産業で、約4%にとどまっています。
  また、運輸・通信業も約4%にとどまっています。

 これらの数字から何が言えそうか。

 まず、製造業や建設業の件数が多いことから、これらの業種は経営破綻しやすい傾向にあると考えるのは早計です。なぜならば、手元に資料がないので確実なことは言えませんが、日本全体の産業構造に占める製造業や建設業の割合と比較しなければ、これらの業種が経営破綻しやすいかどうかの判断ができないからです。

 しかし、事業再生に携わる弁護士としては、重要なメッセージがあります。

 それは、製造・建設・卸売・小売の各業種の業界事情について、弁護士も精通しなければならないという点です。

 この9年間の民事再生申立件数の7098件のうち、不認可が2270件、認可はされたものの3年以内に弁済ができなくなり結局終結決定に至らなかったものが1816件あります。そうすると、合計4086件(57.5%)にも及ぶ申立債務者が民事再生の手続き途中で再建を断念しているのです。

 民事再生法の大きな魅力は、法律の力で債権を大幅にカットできる点です。

 しかし、問題の本質は、負債の多さではなく、収益力や利益率の低さにあるはずです。負債を一時的に大幅に減らすことができても、収益力や利益率が改善されなければ、いずれ経営破綻に至ることは目に見えております。

 その意味で、私たちのような事業再生の専門家は、民事再生法の知識や経験だけではなく、申立事件の大部分を占めている前記の各業種について、勉強していかなければならないと痛感しました。