こんにちは、弁護士の森山です。

 今回も前回に引き続き、昨年施行された中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「経営承継円滑化法」といいます)の①民法の特例(遺留分に関するもの)について、もう少し説明させていただこうと思います。
 (前回の記事はこちら:中小企業の事業承継(2)

 今回は、オプションとしての付随合意についての説明をし、経営承継円滑化法の①民法の特例(遺留分に関するもの)の説明を終わりにしようと思います。

 付随合意は、非後継者が贈与を受けた財産も遺留分算定基礎財産から除外できる制度で、推定相続人間の衡平を図るための措置として認められたものです。

 付随合意は、除外合意又は固定合意をする際に、併せてすることができる合意と定められていますので、これらのオプションとしての制度です。

 利用方法としては、推定相続人間の公平を図ることにより除外合意等につき非後継者の合意を得やすくするために、会社の後継者に株式を相続させ除外合意をする代わりに、他の財産等につき付随合意により遺留分算定基礎財産に算入しないことにする等が考えられます。

 すなわち、長男に株式を相続させてそれを除外合意の対象とすると次男が「兄ちゃんが相続する分だけ遺留分減殺の対象にならないなんてずるい」と言ってくることが考えられるので、次男には実家の土地・建物を相続させることとしてそれを付随合意により遺留分算定の基礎財産に算入しないことにして、前述の「兄ちゃんずるい」と言わせないようにし、それにより除外合意が成立しなくなることを防ごうというものです。

 除外合意・固定合意および付随合意の制度により、遺留分権利者全員の合意さえ得られれば、前述のような遺留分減殺請求による株式の分散は除外合意により防止できることになり、後継者の意欲の阻害については、固定合意で防止できることになります。また、家庭裁判所の手続きについても、後継者が一括でできるので、その点でもメリットがあります。

 事業承継にとってこれらの制度は非常に役立つ制度であると思われ、非後継者の協力が得られる場合は、この制度を使うと容易に事業承継対策が立てられることになると思います。しかし、遺留分権利者全員の合意が取れるか否かが鍵になるので、ここから揉めるようであれば、やはり従前どおりの事業承継対策をする必要はありそうです。

弁護士 森山弘茂