1 販促ツールとしてのマス広告

 週刊東洋経済の2009年9月26日特大号で、マスメディアや広告業界の不況が取り上げられていました。

 同誌によると、「2008年度は朝日新聞社や毎日新聞社、テレビ朝日、テレビ東京、電通、博報堂DYホールディングスなど各業界の大手が最終赤字に転落した」というのです。

 この背景には不況があります。そもそも広告業界は不況に弱い。不況になると、広告主である企業が業績不振のため広告予算を削るからです。

 でも、ここで素朴な疑問が生じます。
 広告って、そもそも販促ツールじゃなかったのか。不況のときこそ広告を利用して販促活動を強化しなければならないはずです。
 それなのに、広告費を削ってしまえば、販促活動は縮小し、業績をさらに悪化させてしまう。まさに負のスパイラルに陥ってしまう…。
 それなのに、広告主である企業が不況時に広告予算を削減するのはなぜでしょうか。

2 マス広告は販促ツールにならない

 おそらく、企業の多くがマス広告の販促ツールとしての効果を疑っているのではないでしょうか。

 景気が良くて儲かっている時は、企業もつい財布のひもが緩みます。
 テレビコマーシャルや全国紙の新聞紙上に自分たちの会社の名前が出れば、「うちの会社は儲かってますよ。成功してますよ」ということを広くアピールできます。自分の会社が有名になって嫌な気分になる人はいませんからね。

 でも景気が悪くなり企業の業績が悪化してくると、そんなこと言ってられない。当然、無駄な経費からカットの対象になってきます。本来であれば、本当に必要な経費は不景気でもカットされません、。必要だからです。
 不況の時、まっさきにやり玉にあがるのは、無駄な経費です。

 ということは、業績不振になると広告予算が大きく削減されると言うことは、広告主である企業が広告を無駄な経費と考えていることを意味します。少なくとも、販促に対する大きな効果を認めていないことになります。

3 インターネット広告は成長

 この事実を裏書きするように、先に挙げた東洋経済によると、インターネット広告は、不況であるにもかかわらず成長を続けているそうです。

 マス広告とインターネット広告の何が違うのか。それはマス広告が潜在顧客になりうる人もそうでない人も、一律に限られた情報を限られた時間で無差別的に流しているのに対し、インターネット広告は潜在的に顧客となりうる人たちをターゲットにして自社の広告に誘導し、潜在顧客に直接訴求できる点にあります。

 まさにインターネット広告は、販促ツールとして有効に機能しているわけです。そうだとすると、不況だからといって、このような販促ツールに当てる予算を削るわけにはいかない。業績不振だからこそ、何とか売上を戻さなければいけない。したがって、インターネット広告は、不況であっても悪者扱いされないのだと思います。

4 広告不況からの教訓

 このような現象から私たちは何を教訓として学べばいいのでしょうか。

 それは景気が良くなって業績が回復しても、調子に乗って広告予算を元に戻してはならないという点です。少なくとも、本当に必要な販促ツールなのか慎重に再考してみるべきだと思います。

 多くの場合、業績不振の時に不要な経費は、業績が良好でも不要なはずです。
 しかし、つい業績が良くて儲かっていると、「まあいいじゃないか」となり、本当に必要なのかどうかも分からないままお金を浪費してしまします。
 このように考えると、所詮は企業も人が動かす組織です。個人の消費者心理とあまり変わらないのかもしれません。
 私も経営者としてこのことを教訓にしたいと思います。