第一に事故物件情報の真偽を調査 事実でない場合は削除請求が可能
相談内容
当社は、賃貸物件のオーナーから同物件の管理を委託されているのですが、ある日、オーナーから、ネット上の事故物件サイトになぜかうちの物件が掲載されているのでそちらで対応してほしいとの要請を受けました。
そこで、同サイトの内容を確認したのですが、当社としては、事故の事実はなくこの掲載内容は事実と異なる情報であると考えています。この場合、管理会社としては、具体的に何をどこまで対応すればいいのでしょうか。
回答
事故物件の可能性が浮上すると、入居者の中には、「こんな場所にはもう住みたくない」「そんな物件ならもっと賃料が安くなるべきだ」と思う方もいるでしょう。事故物件であるか否かは、「このままでは空き部屋が増え、安定した賃料収入を得られなくなる」というように、建物所有者の方々にとっても極めて重要な関心事であります。この場合、管理会社はどのように対応すればよいのでしょうか。
以下、事故物件情報が①事実である場合、②事実ではない場合、③いずれか判明しない場合に想定される状況を踏まえ検討したいと思います。
前提として事故物件情報の真偽を調査する方法ですが、賃貸物件で自殺や殺人などの事故が発生した場合、通常は警察が事件処理を行っているはずなので、まず警察に問い合わせて確認するべきでしょう。その他、近隣住民への聞き込みをするなども考えられます。
まず、①事故物件の情報が事実であると判明した場合です。賃貸物件が事故物件であるという事実は心理的瑕疵(かし)に該当するため、賃貸人は、賃借人に対し、事故物件情報を重要事項として説明する法律上の義務を負います。この義務に違反した場合は、賃借人から、契約解除を主張されたり、すでに支払った賃料返却の請求をされたりする可能性があります。一方、真実である以上、掲載行為に名誉棄損罪や業務妨害罪などの犯罪は成立しないため、掲載者に何も請求できません。加えて、②に後述するサイト管理者に対する削除請求もできません。
次に、②事故物件情報が事実と異なると判明した場合、賃貸人は、①に述べたような心理的瑕疵を理由とした説明義務を負うことはありません。しかし、うわさのせいで入居を思いとどまる人が出てくるのは避けられないでしょう。そうすると、事実上、新規の入居者が確保できない状況や、既存の入居者からの契約解除の申し出や賃料減額の要求に応じざるを得ない状況も起こります。この場合は、一刻も早く事実と相違する掲載内容を削除してもらい、できるだけ風評被害による減収を防ぐべきです。
例えば、賃料減収など実際に損害が発生した場合、管理会社は、サイト管理者に対し、プロバイダ責任制限法に基づいて、事故物件情報の削除を請求することができます。ただ、サイト管理者によっては、法律上の根拠に関係なく、要請があれば素早く削除に応じてくれるところもあるので、そこまで大事にならないこともあると思います。ちなみに、賃料減収の状況をサイト管理者が知りながら請求に反して情報を削除しなかった場合には、サイト管理者に対して、直接、その減収分の損害を賠償請求できる場合もあります。
調査の結果、③その真偽を見抜けなかったという場合も十分考えられますが、この場合は、賃借人に対し、最善は尽くしたのだから説明義務を果たせなかったことに過失はないと賃借人に反論する準備として調査結果が役に立つでしょう。
ご相談内容についてみますと、管理会社の読み通り掲載内容が事実と異なる情報であるかどうかを調査すべきでしょう。そして、事実と異なる情報だと分かれば、サイト管理者に対して削除を請求ないし要請すべきですし、損害が発生してしまった場合は、加えて損害賠償請求をすることも考えられるでしょう。