成人年齢引下に伴い18歳に 早期財産移転が可能に

 前回まで民法改正を取り上げましたが、民法改正に伴い、相続税にも影響が出るようです。今回は、①配偶者居住権、②特別寄与料、③受贈者の年齢要件の引下げについて取り上げます。

 まず、①配偶者居住権とは、相続が始まった時に、亡くなった方の配偶者が、一定期間(相続が始まった時から少なくとも6ヵ月間)または一生涯、自宅を無償で使える権利のことをいいます。

 前者(短期)は相続税の課税対象になりませんが、後者(長期)は相続税の課税対象になります。居住継続と引き換えに、課税されますので、要注意です。

 また、自宅や敷地の評価額は、本来の相続税評価額から配偶者居住権の評価額を差し引いて、計算されます。配偶者居住権の価値が高ければ、他の相続財産(家屋や敷地)の価値が下がってしまいます。平成31年税制改正では、配偶者居住権の評価方法が定められる予定です。

 次に、②特別寄与料とは、亡くなった方に対して、無償で介護などをして、遺産の維持増加に特別の貢献をした相続人以外の親族が、相続人に対して、請求できるお金のことをいいます。

 特別寄与料をもらった人は、遺贈によりこれを取得したとみなされ、相続税が課される一方、特別寄与料を払った相続人は、各自の相続税の課税価格から払った特別寄与料が控除される見通しです。特別寄与料の算定方法は、当面、相続人と特別寄与者との協議もしくは家庭裁判所の判断に委ねられることになりそうです。

 最後に、③受贈者の年齢要件についてですが、現在、贈与を受けた人の年齢が、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上であることが、相続時精算課税制度や直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税率の特例の適用要件の1つとなっています。

 今後、民法改正によって、2022年4月1日より、成人年齢が、20歳から18歳に引き下げられることを受けて、相続時精算課税制度や直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税率の特例の年齢要件もまた18歳に引き下げられる見通しです。

 これによって、高齢者から18歳以上の子や孫への財産移転を早めることもできるようになります。

 今後も、相続に関しては、民事実体法と租税法との関係性を注視していく必要があると考えています。