遺言書を法務局で保管も 紛失・変造リスクを回避
最近では、民法の債権分野の改正が大きく取り上げられていますが、一方で、2018年7月13日に相続分野の改正がされました。今回は、相続分野の主な改正点についてお話しします。
まず、自筆証書遺言に関する改正についてご説明します。自筆証書遺言とは、被相続人となる方が自ら作成した遺言書のことをいいます。自筆証書遺言は、遺言の全文、日付、氏名を自書し、押印することによって作成します。
作成された遺言書は自ら保管しなければならず、相続が生じるまでに紛失や変造などをされる危険があり、相続紛争の主たる要因ともなっていました。
今回の改正に伴い、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が制定され、自筆証書遺言を作成した場合には、相続が生じるまで、法務局において保管することができるようになりました(なお、本法の施行日は2020年7月10日となっています)。
次に、配偶者居住権についてご説明します。これまで、被相続人の配偶者は、相続開始前から、被相続人所有の建物に居住していたとしても、居住できる権利が明文で定められていないため、事実上の使用貸借契約が成立しており、当該建物を取得した相続人に対し、使用貸借が継続すると考えられるにとどまっていました。
これに対して、今回の改正では、配偶者居住権を明文化し、①被相続人の配偶者が、相続開始時において、被相続人が所有していた建物に居住していた場合であって、②遺産分割によって配偶者居住権を取得するとされたとき、または③配偶者居住権が遺贈の目的とされたときは、居住建物の全部を無償で使用収益することができることと定められました。
また、上記②または③の事情が認められない場合であっても、①の事情が認められる場合であって、かつ、当該建物を無償で使用していた場合には、④当該建物について遺産分割が確定した日、また相続開始から6ヵ月を経過した日のどちらか遅い方までは、居住できることとされました。
以上のほか、遺留分減殺や被相続人の預貯金の取扱いについても改正がされていますので、遺言や相続について詳しく知りたい方は弁護士に相談してみてください。