今年に入ってから、ホテルに関するインターネット上での炎上が相次いでいます。利用客からの預り品を紛失したホテルの従業員が、Twitterで客に責任を転嫁するような発言をしたり、アルバイトスタッフが厨房の食器洗い場で入浴している写真をTwitterに投稿・公開したりして問題になりました。
従業員の不祥事がネット上で拡散・拡大してしまったら、また、その情報が事実と異なったら、企業はどのような対策を取るべきかを解説します。
まず、ひとたび不祥事が拡散してしまったら、それを早期に沈静化することが最善の手段です。
具体的には、すぐに記事の事実関係を調査し、事実でありかつ過失がある点については責任を認め、誠実かつ速やかに謝罪する、という対応が考えられます。
ネットには、不祥事を拡大させようとする人が少なからず存在します。そのような人たちは企業のあら捜しをし、ときには断片的な情報や不確実な情報を組み合わせ、不祥事を拡大させていく傾向があります。拡散・拡大している状況を放置したり、後々明らかになるであろう事実を否定したり、責任転嫁したりすると、より拡散・拡大の程度が大きくなる可能性があります。
そのため、認めるべき点は認め、誠実かつ速やかに謝罪するべきです。
他方、ネット上で公開された記事が事実と異なる、事実無根な誹謗中傷である場合も少なくありません。
こういう場合、記事の情報収集をするとともに、事実と異なる情報があれば、いち早く「削除」の手続きを踏むべきです。
ネット上で誹謗中傷の書き込みを見つけたら、その記事が掲載されているWEBサイトに削除申請フォームが設けられているか否かを確認し、設けられている場合はこれを利用してWEBサイトの管理者に対して削除申請するのが一番手軽な方法です。
もし、申請しても応答が無かったら、管理者へ、「送信防止措置依頼書」を送るという方法もあります。
送信防止措置依頼書とは、ネットの情報について削除請求する際、使うことが推奨されている業界標準書式です。かかる書式の送付を受けたWEBサイトの管理者は、明らかに当該書き込みが誹謗中傷であり、他人の権利を侵害している違法な記事であると判断すれば、管理者の判断で自主的に削除することがあります。また、WEBサイト管理者は、投稿者に対して、「削除してもよいか」という意見照会書を送ります。
意見照会に対して投稿者が応答しなかったり、または削除を承諾したりすれば、その記事は削除されることになります。
投稿者が削除を拒否した場合は、管理者側で記事内容の違法性を判断することになりますが、最終的に管理者も削除を拒否することも珍しくありません。
こうなると、任意による削除が困難であるとして、裁判所に削除命令を求める手続をとることになります。しかし、裁判所は「表現の自由」を重視しており、削除が認められるためのハードルは一定程度高いものとなっています。
加えて、裁判手続きをとるとなると費用等の観点から企業にとって負担が大きいものになります。そのため、そもそも不祥事が拡散・拡大しないように日頃から注意を払うことを前提として、拡散・拡大してしまった場合に備えてマニュアルなどを予め作成しておくことが重要と考えられます。