相談内容

 入居者の方から、「どの部屋から聞こえてくるのかは分からないが、子どもの足音が原因と思われる騒音が聞こえており、うるさく感じている。速やかに対処してもらいたい」と申告がありました。同様の申告が複数名からあったため、管理会社としては、原因がどこにあるのかは不明であるものの、騒音自体は発生していると判断し、全ての部屋に子どもの足音による騒音に注意するようにお願いする文書を配布しました。

 すると、入居者の方から、「このマンションで子どもがいるのは私の家族だけであるから、私個人を注意する文書を全員に配布したことが明らかだ。名誉を棄損するものであるから賠償してもらいたい。」と損害賠償の請求をされてしまいました。
 当社としては、賠償金を支払う義務があるのでしょうか。

回答

 名誉棄損という言葉自体はよく聞くと思いますが、今回のような場合にも該当するのでしょうか。

 名誉棄損が成立するには、まず、今回の注意文の配布によって、「誰」の名誉が毀損されたのかということが具体的に特定されていなければなりません。抽象的に子どもがいる入居者全体に対する注意を行ったからと言って、子どもがいる入居者全員に対する名誉棄損になるわけではありません。

 しかしながら、今回のように、マンションの中で「子どもがいる入居者」が一人しかおらず、具体的に特定がされてしまう場合は、名誉棄損が成立する可能性があります。

 次に、文書の内容によって、特定された人物の社会的評価を低下させていることが必要となります。名誉棄損というと、本人がいかに傷ついたかという点が着目されがちですが、そうではなく、一般人から見て社会的評価が低下するような表現であったか否かが問題です。

 通常、全ての住戸に対して、騒音の内容に注意する場合、特定の人物の名誉を棄損するような表現をする必要はなく、そのような意図もないのであれば、名誉棄損が成立する可能性は低いと考えられます。

 しかしながら、表現方法や騒音の種類を記載することによって、特定の入居者への注意を全戸へ配布するような捉えられ方をする場合もありますので、表現方法には注意しましょう。子どもの足音と特定せず、騒音全般への注意を促す方が穏当だったかもしれません。