相談内容
家賃を滞納しているため、建物の明渡請求訴訟を提起したのですが、行方不明であり、任意の退去を交渉することができない様子です。
駐車場には、入居中から自動車が1台止められたままになっており、引き取ってもらえないのではないかと困っています。
車検も切れており、誰も使っていない様子なのでレッカーで移動して保管することとして、駐車場を利用できる状態にしようと思っていますが、どのようにすればよいでしょうか。
回答
たとえ、家賃を滞納した結果、建物の明け渡しを認める判決が出たとしても、建物の明け渡しの強制執行が可能となるにすぎず、自力救済や自力執行が認められるわけではありません。
そのため、自動車自体を傷つけることなく保管することを前提として、レッカー移動をさせる場合でも、自動車所有者の同意なく行うことはできません。
とはいえ、自動車をそのまま放置していては、建物が明け渡しされたとしても駐車場を貸し出すことができないため、新たな賃借人を募集することに支障がでることになります。
法的には、改めて土地の明渡請求を認容する判決を得て、強制執行を実行することが必要となりますが、それには時間がかかってしまいます。また、建物明け渡しを求める訴訟において、未払い賃料についての支払いを認める判決をあわせて取得しており、自動車の所有者と一致している場合は、未払賃料請求を根拠に自動車を差し押さえて競売手続きを行うという方法も考えられます。
そのほか、実務上は、自動車の車検証で所有者と連絡を取り、賃貸借契約が解除されていることを前提に、不法占有が長引くほど土地の所有者の損害賠償責任が拡大していくことを説得材料として、所有権を放棄する旨の同意を得る方法で処分したり、近親者等に連絡をとり、自主的に引き取るよう促すことで解決することもよく行われています。
明らかに不法占有となっている状態の自動車であっても、自由に処分することができないことはもどかしい面もありますが、自力執行を行うことは器物損壊等の犯罪行為となりうることを考慮して、慎重に対応することが必要です。