今回は、説明書等の表示内容を原因として製造物責任が問題となった裁判例を紹介し、製造物責任法についての理解を深めていきたいと思います。

 製造物責任法における「欠陥」(同法第2条2項)とは、当該製造物が「通常有すべき安全性」を欠いていることを意味しています。

 そして、欠陥には3つの種類があるといわれています。①製造物の設計段階で十分に安全性に配慮しなかったために安全性を欠く「設計上の欠陥」、②製造物が設計・仕様どおりに作られず安全性を欠く「製造上の欠陥」、③除去し得ない危険性が存在する製造物について、その危険性の発現による事故を防止するに適切な情報を製造者が与えない「警告表示の欠陥」です。

 食品産業については、しばしば食品に適切な警告表示がされていなかったことから問題になることがあります。そこで、今回は「警告表示の欠陥」について判断した裁判例をご紹介致します。

 小学校の低学年生徒が学校給食で使われていた強化耐熱ガラス製食器(コレール)を落とし、その割れた破片により受傷した事故につき、製造会社に「警告表示の欠陥」があると判示した事案です。

 コレールは、一見するとガラスとは見えず、プラスチックの食器にも似た外観をしています。ただし、割れにくい反面一度割れると通常のガラス製品と比べても激しく飛散するという特徴がありました。

 当該裁判例の中で裁判所は、以下のように述べています。

 「・・・コレールの取扱説明書及び使用要項には、取扱い上の注意として、コレールはガラス製品であり、衝撃により割れることがあるといった趣旨の記載があり、また、取扱説明書には、割れた場合に鋭利な破片となって割れることがあるという趣旨の記載もある。」「・・・しかし、これらの記載は、割れる危険性のある食器についてのごく一般的な注意事項というべきものであり、被告らが、陶磁器等と比較した場合の割れにくさが強調して記載していることや、コレールが割れた場合の破片の形状や飛散状況から生じる危険性が他の食器に比して大きいこと・・・」からすると、その程度の記載がなされた程度では、「消費者に対し、コレールが割れた場合の危険性について、十分な情報を提供するに足りる程度の記載がなされたとはいえない。」と述べ、コレールが割れた場合の危険性について、消費者が正確に認識し、その購入の是非を検討するに当たって必要な情報を提供しているものとはいえないと判示しました。

 本裁判例の特徴は、食品の有利性を強調することの反面、それと表裏一体をなす製品の短所及び危険性についての情報提供をしなければならないと判断した点にあります。

 多くの製品において短所がないものは中々ないものと考えられますので、製品の特徴を広告する一方で、説明書等においては短所をとらえた説明も心がけて頂ければと思います。