食品業界においては、商品のネーミングやマークを他社に利用されることが起こりやすく、商品のネーミングやマークを他社に利用されないようにする必要性が高い業界といえます。

 そのため、戦略的に商標権を取得し、侵害に対処していくことが重要となります。

 商標権とは、そのネーミングやマークを、予め指定した商品やサービスについて独占的に使用できる権利です。

 たとえば、貴社が、清涼飲料水について、「AAA」という商標権を取得した場合、他社は、清涼飲料水について「AAA」という商品名やこれに類似する商品名を使用できなくなります。仮に他社が「AAA」という商品名を使用した場合、貴社は、他社に対し、差止や損害賠償等の手段を採ることができるようになります。

 もっとも、商標権は、その商標を使用する対象となる商品もしくは役務への使用に限って独占的な使用が認められるものであり、異なる商品若しくは役務に対しては効力を有しない点に留意が必要です。

 先ほどの例でいいますと、他社は、清涼飲料水について「AAA」というネーミングを使用できなくなりますが、化粧品について「AAA」というネーミングを使用することについては、妨げられないことになります。

 近年では、著名なスイーツを販売する業者(以下、甲)が、「ケーキ又は菓子を主とする飲食物の提供、及びこれらに関する情報の提供」を指定役務として「BBB(仮称)」という商標を有し、その「BBB」を店舗表示、商品の包装、広告等に使用していたところ、「菓子、パン」を指定商品として「BBB」という登録商標を有する洋菓子メーカーから「BBB」の使用の差止め及び損害賠償を請求されたことが話題になりました。

 この事案は、第一審、控訴審と二度にわたり裁判所の判断を受けました。

 甲は、「BBB」の使用が「洋菓子の小売」という「サービス」に対するものであり、「洋菓子」という「商品」への使用ではないと主張しましたが、裁判所(第一審)は、甲の商品の包装等に使用される場合は、「商品」である「洋菓子」への使用であるうえ、小売役務に使用される場合であっても、洋菓子の小売は、製造販売と同一事業者によって行われるのが一般的であり、用途(飲食)、商品の販売場所と小売役務の提供場所(店舗)、需要者の範囲(一般消費者)等の面で、商品(洋菓子)と一致していることから、出所の混同を招くおそれがあると判断し、当該商標「BBB」の指定商品と、甲の商品・役務との類似性を肯定しました。

 この結論は、第二審においても支持され、結局、甲には損害賠償として5000万円以上の支払が命じられています。

 商標においては、取得した区分によって権利の範囲を見誤るがために他社の商標権を侵害してしまう例もあるといえます。 商標に関しては、素人的な判断は危険な場合がありますので、専門家の意見を聞いたうえで行動していくことが重要といえます。