最近、有名人が、覚せい剤とMDMAをそれぞれ使用したとの被疑事実で逮捕されたようです。逮捕されたことは使用したことを確定するものではないので、この点は今回おいておきます。
覚せい剤は、覚せい剤取締法という法律で、輸出入、所持、製造、譲渡・譲受、使用がいずれも法律で禁止されています(広告や施用も制限されています。)。
この禁止にただ違反しただけでも刑罰が科されていますが、さらに営利目的をもっていた場合(つまり、誰かに売るために持っていた等です。)、より重い刑罰が科されます。
すこし余談になりますが、営利目的か否かはどう判断されるのでしょうか。本人の気持ちの問題なのだから、たとえば誰かに売ろうと思って覚せい剤を所持していた場合でも、「売るつもりはなかった。」と言い続ければ通る・・・というわけではありません。
営利目的であれば、たいてい、それ相応の行動がついて回ります。たとえば、覚せい剤の1回の使用量は、依存度によりますが0.01~0.1g程度だと言われています。それを、仮に1kg所持していた場合には、一番常習性の高い重度依存者の使用量に換算しても1万回分に相当しますから、一人で使う量ではないだろう、誰かに売るつもりだったのではないかと考えるのが普通です。
そのほか、やたら丁寧に小分けされていたり、ほかの食べ物に混ぜてかわいいラッピングがされている等の偽装工作がされていたりすると、営利目的だという判断がされやすくなります。自分で使うためと解釈するには、あまりにも凝りすぎている、ということですね。
では、MDMAはどうでしょう。MDMAは、「合法ドラッグ」などという能書きで広められているものもあるようですが、基本的に、「合法ドラッグ」などというものは存在しません。麻薬及び向精神薬取締法を見てください。
同法2条で、規制される麻薬・向精神薬等の定義が示され、同法別表1ないし4で具体的な分子の名前が示されています。特に、別表1(麻薬)と3(向精神薬)には、「前各号に掲げる物と同種の濫用のおそれがあり、かつ、同種の有害作用がある物であって、政令で定めるもの」とあります。
MDMAは、薬物の混ぜ合わせ方や量を一部変更させて、どんどん新しいものが出てきます。だから規制が追い付かないでいた部分を、販売する側が勝手に「合法」と呼んでいました。しかし、基本的な分子構造が今まで販売されていたMDMAと同じであり、作用や濫用のおそれがあれば、それは麻薬ないし向精神薬として規制されます。
ドラマなんかでは、「すっごくいいクスリなんだけど、まだ法律で規制されていないんだ。」などと言う誘い文句でMDMAの使用を勧められるシーンが出てきたりしますが、これは嘘だということです。
MDMAの具体的な規制は、覚せい剤と同じく、輸出入、所持、製造、譲渡・譲受、使用が禁止されているほか、さらに小分けにすること自体も禁止です。禁止違反に重い刑罰が科されることも同じです。
ピンクや虹色の色がつけられたもの、砂糖菓子のようなかわいい見た目のものもありますが、禁止されていること、服用によって体も人生も周りの環境も壊れていくこと等、すべて同じです。
なお、いわゆる「合法ドラッグ」のなかには、本来鎮痛剤等として医療用に使われるべき薬剤を横流し・盗用等して、麻薬と同じ効果を得ようとするものもありますが、こちらは薬事法で禁止されており、違反にはやはり刑罰があります。
これらの薬物規制は、絶対違反してはいけないものです。
しかし、もし万一、何かの間違いで違反してしまった、又は、違反したとの疑いを受けたという場合には、ご相談ください。お力になれることがあるかもしれません。