昨日、ネットのニュースで、4月30日に法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」において法務省から法改正についての試案が提示された旨を報道するものを見ました。試案では、取り調べ全過程の可視化や通信傍受対象となる犯罪の範囲拡大、被疑者・被告人の捜査協力に対し有利な処分を可能とする司法取引的制度の創設などが盛り込まれたようです。

ニュースを見て、「そういえば、取り調べの可視化を求めるだの、法改正に際して人権上問題がありそうな規定が盛り込まれないように注意しなければならないだの、前からいろいろと声明文が出ていたかな。」と、ふと思ったりしました。

上記試案の内容のうちでは、取り調べ全過程の可視化についてが、最も紙面を割かれているようでした。最近では袴田事件の再審開始決定が話題となっていることなどから、この点が一番注目を集めているのでしょう。
取り調べの可視化(録画・録音・取調べ時の弁護人の立ち合いなど)については、被疑者・被告人の権利の擁護を訴える弁護士側と、捜査への影響を懸念して拒否反応を示す捜査機関側とで、長らくせめぎあいが続いていたようです。その後、裁判員裁判の開始や、刑訴規則198条の4の創設などで、取調べ状況の適正さに疑義が生じる場合を考え状況を資料化しておくということに理解が進み、録画・録音は現在試験的な運用もされています。
今回の試案は、その先に、原則としての取り調べ状況全過程の録画・録音義務を、法律上規定するよう提言するものということです。読売新聞のネットニュースなどは、「警察と検察に、取り調べの全過程の録音・録画(可視化)を法律で義務付けることが確実となった」との書出しでした。

もっとも、現時点ではたたき台としての試案に留まっていますし、可視化対象事件の範囲や例外規定などについてはこれから煮詰めていくようです。また、実際に可視化が実施されたとして、それら記録からの認定にあたりどのような状況が記録されていれば取調べを違法とするかは、結局事例を積み重ねて基準化していくこととなるでしょう。
よりよい刑事司法制度としていくには、まだまだ長い時間を必要としそうです。