先日、パソコン遠隔操作事件の被告人が保釈を求めた件について、結局最高裁が特別抗告を棄却し、被告人の保釈が確定したというニュースを見ました。相当な凶悪事件のごとく(犯罪であるならば、本来凶悪も小悪もないのでしょうが。)被告人の身柄拘束に拘られ続けるこの事件、なんだかすっかり身柄拘束を続けようとする検察側、それに抗する被告人側という部分だけがピックアップされてしまった印象があります。この件が、もともとはどういう話だったのかということを覚えている人は、今どのくらいいるのでしょうか。
この件、保釈を巡る動きは、まず被告人が東京地裁に保釈を請求→東京地裁がこれを却下すると被告人側は東京高裁に抗告→東京高裁が保釈を認めると検察が特別抗告、併せて保釈の執行停止を申し立て→東京高裁はいったん保釈を停止したが、結局は停止を解除→最高裁が特別抗告を棄却、という流れだったかと記憶しています。
本件で保釈請求却下後の不服申立てが抗告となっているのは、第1回公判期日後に保釈を請求したためでしょう(刑事訴訟法280条1項により、第1回公判期日までの保釈請求については裁判官が処分を行なうため、不服申立て方法は準抗告となります。)。東京高裁が保釈を認めた後、検察が特別抗告とともに執行停止も求めているのは、特別抗告は原裁判の執行を停止しないためです(刑事訴訟法424条1項、同434条)。
検察の行なった特別抗告ですが、特別抗告事由はほとんど憲法違反か判例違反に限られています(刑事訴訟法433条1項)。本件で、そこまでの事由があったかは、甚だ疑問に思われます。
もっとも、特別抗告に対する刑事訴訟法411条の準用を判例は認めているので、東京高裁の保釈許可につき、検察として、「破棄しなければ著しく正義に反すると認め」られるべきと考えたのでしょうか。ただ、被告人は第1回公判期日に素直に出頭し、公訴事実は争っても証拠にはすべて同意し、一般人からしてかなりの高額である1000万円の保釈保証金の納付を命じられており、この状況で保釈を許すことが著しく正義に反することになるのか・・・。このあたりの経過に対しては、執行停止の申立てを行なったことと合わせ、疑問や批判が多々噴出しているようです。
この件では、執行停止の申立ては本来東京高検の検察官が行うべきであるところ、東京地検の検察官が行なったというミスも指摘されているようです。このあたりには、何か組織としての乱れが見受けられるようで、「らしくなさ」を感じます。
最後に、全くの余談ですが、この件の被告人の下の名前を見るたび、個人的にはなんとなく微妙な気持ちになってしまいます。