今回は、逃走罪について解説いたします。
逃走罪は、いわゆる脱獄等があった場合に適用される罪で、近時報道でも耳にすることがあったかと思います。
逃走の罪は、大別すると、①逃走「する」側の罪(逃走罪・加重逃走罪)と②逃走「させる」側の罪(被拘禁者奪取罪・逃走援助罪・看守者等による逃走援助罪)からなります。本稿では、逃走「する」側の罪である逃走罪についての解説になります。
逃走罪は、刑法97条に規定されており、同罪は「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したとき」に成立します(法定刑は1年以下の懲役であり、未遂の処罰規定もあります。)。
すなわち、①「裁判の執行により拘禁された既決の者」または②「裁判の執行により拘禁された未決の者」が③「逃走する」ことが要件です。
①「裁判の執行により拘禁された既決の者」とは、判決の確定により刑事施設に収容されている者をいいます。典型的には、懲役刑が確定して、拘置所等に収監されている者が該当します。
②「裁判の執行により拘禁された未決の者」とは、勾留状によって刑事施設または留置施設に拘禁された被疑者または被告人をいいます。したがって逮捕されてはいるが、勾留にまで至っていない被疑者は含まれません(一部に反対説はあります。)
③「逃走する」とは、看守等の実力支配を脱すること、つまり、拘禁状態から脱することを意味します。
そして、未遂の成立時期としては、有力な見解によれば、拘禁作用の侵害が開始されれば未遂とされております。この見解によると、具体的には、房の扉の施錠の開錠行為があることで認められることになります。
既遂の成立時期としては、看守等の実力支配を脱して、刑事施設から脱出した場合に既遂に至ります。たとえば、開錠し居房からは脱出しても、刑務所の構内からは脱出できなかったような場合には、未遂にとどまることになります。